「シャチーまーだー」
「あとちょっとー」
普通逆でしょ、この状況。
そんな風にため息をついた私は、それでも別に嫌な気はしてなくて、店前のベンチに座った。
隣には買い物帰りの大きな紙袋が二つ。シャチは新しい帽子が欲しいといって、物色中。
私は普段オシャレなことにあんまり興味がないから、こういうトコは凄いなぁと思う。
何気にシャチは手先が器用だし、料理だって簡単なものなら作れるみたいだし。なんだこれ、私より女子力上か。
そんなことを思っていると、満足そうなほくほく笑顔のシャチが出てきた。
「おまたせ!満足満足」
「……」
「どうだ!恰好いいだろ!」
「ごめんシャチ、いつものと違いがわかんない」
「なにー!」
こっちがいつもの!こっちが新しいの!と見せられるも、微妙に?色合いが??くらいの私。申し訳ないと思ったが、興味のないものに対してなどそんなものだ。
シャチだってペンギンが古い本について熱く語っても、せいぜい寝落ちするのがオチだろう。
帽子については残念ながらわからないけれど、それがシャチに合ってるかどうかはわかる。
「でも似合ってるよ、恰好良い」
「お前適当に言ってない?」
「ううん、ちゃんと分かって言ってる」
そう言うと、シャチは照れたように笑った。
うん、似合ってるのを自分で見つけられるのは良いと思う。
「んじゃあ戻るか。遅くなっちまったな」
「シャチのせいでってペンギンに言っとく」
「お前が言うと、おれの所為じゃなくても、おれの所為になるんだよ……」
シャチがベンチに置いてあった紙袋二つを、ひょいっと片手で持ち上げる。片方を持とうとしたけれど、大丈夫だからと断られてしまった。
女子力も高くて、男らしいんだけど、どうしてシャチってこれでモテないんだろう?
私ばっかり手ぶらなのも嫌だったから、
シャチが反対の手で持っている帽子の入った紙袋を持つことにした。
「良いのに」
「じゃあこれでどう?」
私は空いたシャチの手に、自分の指を絡ませる。
シャチは驚いた様で、荷物を落としそうになった。
「何してるの」
「おまっ、いきなり!」
「いいじゃん、デートしてるみたいでしょ?」
夕日に照らされ、二人繋がった長い影を揺らしながら船まで帰った。
今度の島では、私も何かオシャレしてみようかな、と思った。
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原生地様