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「つーわけで。知ってるやつもいると思うけど、船に乗ることになったからな!ほら自己紹介!」
「う、うん……レキといいます。しばらく、お世話になります」
「「おー!!」」


 食堂でクルー達から上がった歓声に、レキは目を瞬かせた。

 結局部屋の片付けは夕方まで続いた。現在は夕飯時に集まってきたクルー達に、シャチが大体の経緯を説明していたところだった。自分が船に乗ることにもっと難色を示されるのかと思っていたが、見る限りウェルカムな彼らにレキは驚くしかなかった。


「レキちゃん、宜しくな!」
「いやーやっぱ女は良いな!」


 次々と群がってくるクルー達と言葉を交わしながら、全員の名前を覚えられるかなぁなどと呑気なことを考えていると、シャチがムスっとしたような声をあげた。


「お前らなー、言っとくけど……」
「味見の一つもできねぇと思っとけよ」


 シャチを遮るように食堂に響いた声に、一同は一斉にドアの方を振り向く。そこにはレキを船に乗せると決めた張本人のローと、ペンギンが立っていた。


「えー!キャプテンそりゃないですよ」
「船に女がいるのに我慢しろっていうんですかー!」


 ローの言葉に巻き起こる大ブーイングにレキは硬直した。女の捕虜といえば、自然とそういうことになるのか……と内心どきりとしたが、ロー自身にそれをさせる気は無いようでほっとする。というか、それでローが許したとしたら、自分は先日の宣言通り海にでも飛び込んでやると、心の中で呟いた。

 クルー達といえば、納得いかないのか異議を申し立てている。それにレキは乾いた笑いを漏らした。まあ男所帯なんて、そんなものなのだろう。そう思うことにして、あまり無防備を晒すのは止めようと胸に誓った。

 ――クルー達の慰み者にされることもありえる

 そしてふと、昨日言われた言葉が甦り、ちらりとローの隣に立っているペンギンに視線を向けたが、気付かれることはなかった。


「手出したら、殴られるぜ」


 定位置であるのか、レキのすぐ傍のソファにどかりと腰を下ろしたローは、自分の頬を指して意地の悪い笑みを浮かべて言った。その瞳が自分を見ていることに気付いたレキは、ぎくりと口許をひきつらせる。できれば黙っていてほしかったなんて、自分勝手な言い分だけど。
 しかしそれを聞いたクルー達は、驚きの形相でローとレキを交互に見た。


「レキ、もしかして……キャプテン殴っちゃったの?!……凄いね!」
「え、なに、実はお前凄い大物なの?実は海軍将校とか、とんでもない札付きとかいうオチ?」
「し、知らない知らないっ」
「ははっ、そりゃ面白ぇ」


 ベポとシャチにもうある種の尊敬の眼差しで見られ、慌てて首を振って否定すると、レキは声を上げて笑っているローに非難の声を上げた。


「あれはあなたが悪いんでしょっ」
「おれがおれの船で何しようと勝手だ」
「船長だからって何でも許されると思って……」
「思ってるな」
「反省してない!」


 ローのさらりとした言い分に、頬を赤くして言い返すレキ。
 その様子をハラハラと見ていたクルー達は、ローを相手に気後れすることなく話すレキをやはり大物ではと感じ、珍しく饒舌な我らが船長を不気味に思ったのだった。
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