うきうきとスキップをしながら廊下を行く。
すれ違った兵士が怪訝そうな顔をするが、近くにいた兵士に何事か耳打ちされて頷いていた。
内容は聞かずとも分かっている。
なぜ私が上機嫌なのかと疑問に思ったのだろう。
そして、近くの兵士はコールマン絡みでなにかあったのだと耳打ち。
この予想が外れているとは思えない。
更に推測上の彼らの予想も外れていない。
今日は珍しくコールマンに呼び出されたのだ。
以前、呼び出された時は書類のミスについてだった。
最近書類仕事をした覚えはない。
これはきっとただならぬことだ。
悪い方にではない。
今日こそ私の想いが通じて、コールマンから…。
想像して笑いが漏れる。
そうこうしている間にコールマンの執務室。
相変わらずノックをせずに扉を開けた。
「コールマン!」
「あぁ、来たな」
そこにはコールマンと、
「メリアノ…?」
「えっと、こんにちは」
「こんにちは」
初めて会ったときと同じ状況だ。
ただ、彼女とコールマンの関係を知っているので前のように泣いたりはしない。
「ヨウコ」
コールマンが私を呼んだ。
満面の笑みでそちらを向く。
「なにっ?」
「今からメリアノ嬢に付き添って街へ行ってくれ」
「…え?」
「ちょっとごたごたがあってな。彼女を一人で外出させるわけにいかないんだ」
「ちょっと待ってちょっと待って」
それはつまり、
「仕事の話?」
「…それ以外になにがあるんだ?」
私の顔からは笑みが消え、肩を落とした。
「なんだ…仕事か」
「お前はなんだと思ったんだ…?」
「コールマンからの愛の告白」
「なっ!…絶対ない!」
「なんで言い切るのよー!」
「するわけないだろ、そんなの!」
「なるほど。コールマンは行動で示すタイプか」
「おい」
「私はいつでも歓迎するからね。会議中とかは困るけど」
「人の話を聞け」
「私室に踏み込んでくれてもいいし」
「絶対にしない。死んでもしない」
「じゃあ私が行こうか。コールマンの部屋」
「弓で射る」
「下の?」
「アホか!!」
顔を赤くしたコールマンがひときわ大きな声を上げる。
メリアノが驚いていたが、いつものことなので私は平気だ。
むしろ心地よい。
「早く行け!あんたに付き合ってたら日が暮れる」
「それなら尚更いい時間帯だよね」
「あんた、後は頼むからな」
「あ、はい」
「ちょっとコールマン!?」
彼は私達を追い出すとバタンと扉を閉めた。
「また後でね!」
「もう来なくていい!」
部屋の中からそんな声が聞こえたが聞かなかったことにしよう。
「すみません…」
「…なんであなたが謝るの?」
私と目が合うとメリアノ嬢が謝ってきた。
謝られるようなことは一つもされていない。
街へ同行させることを謝っているのだろうか。
「さっき落ち込んでたから」
「あぁ。気にしなくていいのに」
当たり前だが、本当に愛の告白をされる、なんて思っていたわけではない。
だったらいいなーという希望だ。
「それより、どこ行くの?」
「ちょっと日用品を買いたくて…」
「なるほど。それだと男はちょっとね…」
「はい。それでコールマンさんが」
「私を呼んだわけか」
「すみません。仕事大変なのに…」
「いや。全然」
「そうなんですか?」
「うん。出来なかったら優秀な青髪のデスクにでも置いておくし」
「それって…」
「いいのいいの。普段迷惑掛けられてるからね」
ふらふらしているように見えるが、ワイアットは優秀だ。
だから副官なんてものが出来るんだと思う。
「さぁさぁ、時間がもったいないよ!早く行こう!」
私は彼女の手を引いて、廊下を歩き始めた。