さよならあくま

「なぁ、○○聞いてるのか」

彼を避けるために書店に行かなかったのに、なぜ隣にいるんだ。聞いてるのかだって?聞こえてません!私はランチメニューなんて頼んだせいで席を立てなくて、さっきから声をかけてくる悪魔にただひたすらに無視する。

「アジラフェルが初めてクッキー焼いたんだとよ」

いつか反応すると思ったのか一人でべらべらとしゃべり始めた。これはまずいと仕方なく力で皿の料理を全て家に移動させて席を立つ。ここでは食べてられない!
なんでこんなにもクロウリーと言葉を交わさなくなっているか簡潔に言うと彼が悪魔で私が天使だからだ。もっと詳しく言うと上司が勘づきそうなのである。それに私は天使で、悪魔とは関わってはいけない。そんな初心を思い出し、書店の近くには寄らず、二人のよく行く場所は避けていたのに。
相変わらず家への道のりを歩いてる間も足を私の前に出してきたり(反射で避けた)びっくり箱を見せられたり(どこから出てきた)したが、全て無視。もうすぐ家ってところで急に抱き寄せられた。ここで力使うとなるとクロウリーをぶっ飛ばす以外ない。そんなことできなくて少し抵抗しつつ顔を合わせないようにしていると彼の顔が近づく気配がした。

「天使は全ての存在に祝福を与えてくれないのか?おれに祝福のキスをくれよ」

"My Angle"って呼ぶせいで通りすがる人間にすごく見られるけど、家まで帰れば安心だと無視を決め込む。あぁ!許されるなら彼を彼方へ飛ばしたい!

「おれからキスしていいのか?……My Angle愛してる」
「ぎゃー!まって!」

彼を荷物のようにずりずりと引きずりながら歩いていれば顎を掴まれ顔を固定される。流れるような動作にキスまであと2秒ってところで危ないことに気づき彼の胸を叩いた。

「なんだ、聞こえてるじゃないか」
「馬鹿!なんでキスしようとするのよ!」

離れてくれないと思って強く叩けば意外にもあっさりと解放され目の前には楽しそうに笑う悪魔がいる。

「○○にはこれが効果的だろ?」
「私には近づかないで、悪魔」

家までの道のりをエスコートするつもりなのかまた近づいたクロウリーにそう言えば、さっきまでの強気はどこへ、「そう言うなよ……」と眉を下げられて私の無視期間は仕方なく終了したのだった。

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