ヨンドゥ

「愛してる」
酔ってどんちゃん騒いで気分が良くなり始めた頃、ヨンドゥの傍に滑り込んだ。いきなり来た私も構うわけでもなく酒を飲む彼に怒られないことをいいことに擦り寄って甘えて愛の言葉を吐いた。「酔っぱらいがうるせぇな」と唇に噛みつかれガタガタの歯のせいで出血した唇を拭って違和感を感じた。私今言った言葉なんだっけ。……愛の言葉なのはわかるけど。ぱくぱくとさっきと同じように何回か動かして気づいた。あ、故郷の言葉だ、と。もう何十年も使ってない言語に笑いが出る。体では覚えてるものなんだな。もう何回か愛してると口から出して笑って……思い出すのをやめた。ヨンドゥについて行くと決めた時に捨てた故郷なんかもういらない。言語も。言い慣れた宇宙の言葉で何度も愛してると言い、上書きをすれば私の過去ごともみ消せた気がした。

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