ベンベックマン

島に着いたからと始まった、理由はなんでもよさそうな宴が一段落してその辺に転がって寝るやつが増えた頃、私は酔いを覚ましたくて船を降りた。その辺歩いてくるねとこんな日に不寝番当たってしまったやつにジュースを差し入れゆっくりと歩き出す。夜の海の音は心地よかった。

「○○、冷えるぞ」
「顔は熱いからちょうどいいよ」

ざくざくと後ろから砂を踏む音がしたと思えば肩には彼の上着がかかっていて背中は体温で暖かい。もうちょっと向こうまで行きたかったんだけど、まぁいいか。

「何か用事でもあった?」
「いいや。ただ降りるのが見えたからな」

そう。とだけ返しぼーっと海と空を見つめる。その間もずっとつむじにキスされたり、髪をすかれたり。ふと気づいた、これ心配されてる?

「ねぇ、別に何か悩んだりしてないからね?」
「信用ならねェな。いつも誰にも話さず両手いっぱいに抱えて潰れそうになってんのは誰だと思ってんだ」
「あー、うん。でも今回は本当に何も悩んでないよ。波の音でも聞こうかと思っただけ」

私はそんなつもりはないのだが、日々迷惑をかけてるのも事実なので全くもって何も言い返せない。ベックの手に自分の手を重ね体温を分ける。潮風のせいかさっきよりは寒くなってきてしまった。

「もう戻るぞ」
「はーい……あ、ベック。何かあったら次はちゃんと言うからね」
「いや、その前におれが感じ取ってみせるさ。○○が全部抱える前にな」

頭を撫でた手を肩に添えられゆっくりと歩き出す。ちょっとは反省して何かあったら今度こそ早めに話そう。彼の横顔を見れば、ん?と優しげな目で見られベックって私にすごく甘いなぁとにやける口を隠した。

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