who's there?

今日もまた屋上からゴミ袋の山にダイブ。部下がせっせとスポンジを詰めて加工してくれてるおかげで今まで怪我せずに済んでいるけど、汚いのにはかわりなくて少しへこむ。その気分を紛らわせたくて、横に私と同じように埋もれてる彼の上に乗っかった。

「なに?」
「なにも」

真っ赤で派手なそのスーツの奧、心臓の鼓動を感じるために耳を押し当てる。どくっどくっ、と大きく脈打つのを聞きながら息を吐いた。もちろん生きてることに安心したのもあるが、まるで心臓から何かが破り出てくるみたいな鼓動に密かに怯えている。その心臓には何が隠れているのだろうか。少年のように純粋無垢で涼しい顔なのに、闇が垣間見える彼を邪魔する何かが出てこないように祈り、おでこをくっつけた。

「knock knock……who's there?」
「Ah……Tank」
「who?」

瞳を覗き込むようにして凝視する。なんとなく尋ねれば誰がいるかぐらいはわかるかと思ったのだ。定番ジョークを無視すれば何を考えているかわからない瞳は彼の方から逸らされた。

「誰もいないよ、そこには」

押しのけられ手を引かれて立ち上がる。今まで見た中で一番不安そうな顔をしていて手を伸ばしたいのにこちらから見える背中は全てを拒否されているようだ。だからせめて出てくるときは彼を壊さず穏やかに顔を出してくれと願い、背中の心臓がある位置にキスを落とした。

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