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ベン ベックマン




「おれの肉だ!」
「いやだ!おれが食う!」
さっきから肉の取り合いをしてる6歳児と26歳児を遠目から見つめる。我先にとマキノさんが持ってきた肉にフォークを刺し、ある時はシャンクスが、ある時はルフィが、口に頬張りドヤ顔したり煽ったりを繰り返していた。サンタ服を着込んだだけあって間抜けだ。
「あれいつ終わると思う?」
「さァな。肉が尽きるまではやるだろ」
「お頭も大人気ねェなァ」
ベックもルゥも呆れた声を出すが、顔は笑っている。あれを肴に酒を飲むのだからみんな慣れたものだ。
「お前はベックと肉取り合わなくていいのか?」
「するか?」
「遠慮しておきます」
フォークを肉に突き刺してぎらりとした目でこちらを見られて反射でハンズアップする。それを見てヤソップとルゥは大笑いしていた。私を暇つぶしにしないでくれ。
「祝い事だから何か二人で勝負しろよ、見てェ」
「おれはベンが勝つほうに賭けるぞ」
「まだするって言ってない!」
まだ何も言ってないのにヤソップのせいで周りが乗り気で賭けが始まっている。勝負決めてから賭けてよ!ベックは嫌じゃなさそうだ。
「力勝負じゃ勝敗は明らかだし、飲み比べはどうだ?」
「私不利じゃん」
「○○は一番アルコール低いやつで、ベックはウォッカでだったらいい勝負だろ」
「んー」
「のった」
私がまだ悩んでるのに今飲んでいる酒を飲み干してグラスで机を叩く。もう野次の盛り上がり方が異常だ。私はやると言うしかなくなっていた。
「クリスマスなのに二人して酔いつぶれるの馬鹿じゃない?」
「たまにはこういうのもいいだろ」
「手加減はしないぞ」
最後の抵抗でクリスマスというイベントをおしてみるが少しも辞める気がない。ベックに宥めるように髪まで撫でられてる間に、ヤソップが酒が入ったグラスを起き机を叩いた。
「一杯目!」



「も〜りたいあしてよ〜」
「○○がしたらどうだ?」
ヤソップたちが予想していたようにベロベロの私にもう少し余裕のありそうなベック。もう私はあと3杯ほどで落ちそうだ。奥の手を使うしかないと思考のぼやけた頭で考え、ヤソップを引き寄せ囁いた。
「…………」
「いいのか?」
不安そうなヤソップを横目に早くと二の腕を叩くと、奥へ引っ込んだあと先程と同じようにグラスを持ってくる。そのグラスを手に取り、彼が「十五杯目!」と叫ぶ前に一気に煽った。
「「おぉー!」」
歓声が湧くのを聞きながら机に手をつき体を目の前のベックへと寄せる。彼も思考が鈍っているのか抵抗も逃げもしていなくて、そのまま襟元を掴み口付けた。時間としては三秒くらいだろう。口の中に入っていた度数が高すぎる酒を移し終え離せばベックの目が揺れた気がした。
「見せつけんじゃねェよ!」
「さっさと潰れろー!」
野次の声を聞きながら彼を見つめれば口元を手で覆っている。さぁ、吐け!胃の中のものぶちまけて終わらせろ!そう願いガンガンしてシャットダウンしそうな頭を奮い立たせる。もう終わる、ベックが倒れろ!興奮して立ち上がった瞬間、腕を掴まれ引き寄せられた。
「…………あー解散だ」
何かを察したヤソップが解散と言い腕をふってるのが上下反転して見える。「逃げるな!」とクルーたちに言われて初めてベックに抱えられてることが判明した。



「何飲ませた……」
「アルコール90%のおさけ」
ゲホゲホと咳き込み、胃の中身を出し終わったらしい彼は目は死んでいるし、足がふらふらだ。こんなベック初めて見た。
「はいたから、わたしのかちね。やったーー」
「まてよ、○○は最後飲んでねェだろ」
「まけずぎらい。だいたいなんでわたしとの勝負にそんな乗り気だったの」
「お前と喧嘩どころか手合わせもしたことねェだろ。張り合ってみたかっただけだ。……最後のはずるいな」
ベッドに倒れ込む彼に乗りかかり瞼にキスを落とす。シーツに広がった黒髪でくるくると遊んでいると腰に手がまわった。
「で?勝ったお前はおれに何を望む?」
「サンタの服着て明日子供たちにプレゼント配ってよ、その姿見てみたい」
「赤髪副船長も形無しだな……○○も着ろよ」
「だめ、ベックだけね。楽しみにしてる」
その言葉におでこを押さえ項垂れる彼に少し可哀想かなと思いながらも、赤くて派手な色の服を着た彼を想像して笑いがこみあげる。慰めにキスしてあげればその辺に転がっていたお酒を口移しされ、盛大にベッドから転がり落ちた。

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