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コビー




海軍入りたての下っ端は雑用や、掃除など仕事と言えないようなものばかり。その辺はまだ下っ端だから仕方ないと我慢してやっていたが、これも仕方ないのだろうかと寒さで派手な赤い服を摩った。
「はーいサンタさんからお菓子だよー……いつまでこれやるわけ?」
「10時ですね。寒さ大丈夫ですか?」
私の早く帰りたいという気持ちを込めた質問にも律儀に答えるコビーの肩に頭をのせれば、背中を温めるように手を添えてくれる。安物のサンタ服にじわりと温かさが広がった。
「これ終わったら温かいシチュー食べたいなぁ」
「野菜がごろごろ入ったのがいいですね」
温かいシチューを脳内に思い浮かべながら近づいてきた子供にお菓子を配る。そう思えばここから少し行った角のレストランが美味しいと聞いた。シチューはあるか分からないけど、温かいものはあるはずだ。
「一緒にご飯行く?」
「2ブロック先の角のレストランにしませんか」
「賛成!私も言おうと思ってた」
ハイタッチをするように肩叩き抱きしめる。彼がおずおずと腕を背中にまわすと、密着する部分が増え暖かい。離れるのが嫌になってきた。
「このままお菓子配ったら怒られるかな」
「先輩がとんでくるかもしれませんね。……今はこれだけ」
体を離され惜しそうにゆっくり離れれば、私の真っ赤な手を掴まれた。ぎゅっと暖かさを共有するように、でも痛くないように優しく。その手を少し隠すようにさっきよりもくっついて、お菓子を早急に減らすため「サンタだよー!」と大声で叫んだ。

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