140字SSその他

言うと思った/イヌアラシ公爵
「公爵ぎゅーってして」
私の背丈半分ほどのゆガラは私に向かって両腕を広げていて、仕方ないとしゃがみハグをした。
「公爵の匂いする」
すりすりと胸に顔を押し付けられ笑うのに耐えながら、早々に離れようと身を引く。その時の寂しそうな顔を見て次に何を言うかわかってしまった。
「ガルチューしていい?」
「少しは遠慮を覚えんか」


照れ隠しの仕草/イヌアラシ公爵
抱き寄せたとき、花を渡したとき、彼女は少し俯いて顔を見えないようにする。嫌がってるわけではないらしいが何言っても顔をあげてくれない。今日は銃士隊に「お似合いですね」と言われてから隣を歩いている今も俯いている。
何故そんなにも俯くのだろうと少し強引に、けど傷つけないように、彼女の髪と頬の間に手をいれ髪をかきあげれば真っ赤になった耳と顔が現れ、見開いた目が合った。
「こ、公爵」
「なんだ、照れ隠しか」
赤くなった耳に人間のように口を寄せ、触れれば彼女は固まってしまい面白いなと次は首に口を寄せた。


上手くしつけてやらなくちゃ/ペドロ
「そのまま体を捻れ、大きく反らなくていいからバランスを保て」
剣の動きを避ける練習をしていれば彼女は中々に筋がいいからすぐ動きを覚えていく。おれのがら空きの横腹に剣を持ってくるところも素晴らしい。
「そうだ、そうすると次空くのは?」
そう尋ねたのに彼女はそのままおれに突っ込み頬にキスをしてきた。ここだ、ここがだめなのだ。「鍛錬中だぞ!」と言えば軽々しい足取りですぐさま距離をあけたから、一気に間合いを詰め剣を顔の横に振り下ろしてやった。


離してあげれなくてごめんね/イヌアラシ公爵
「公爵?」
その声にはっとした。彼女が自分の膝の上で話をしていて確かシシリアンに呼ばれたはず。その瞬間私は無意識に彼女の腰に腕をまわしていたのだった。
「おお、悪かった」
そっと、でも心の奥底では名残惜しかったのか動きが些かゆっくりになる。私の嫉妬など見苦しいだけだと思いながら彼女と目を合わせば、ばふっと音がしそうなほどしっかり抱きしめられていた。
「ごめんね、シシリアン。私公爵から離れたくなくなっちゃった。用事あとでもいい?」
「ゆガラ、」
「公爵もごめんね」
そう謝る彼女はどれほどできた子なんだ。それを受け入れるように頭を撫でれば嫉妬の気持ちが薄れた気がした。

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