酔いどれ
「何故君はいつもそんなに酔うまで飲むんだ」
真っ直ぐ歩くことさえできない彼女の腰を抱き、帰路につく。半分目まで閉じて、君じゃなかったら置いていくところだ。
「お酒だ〜いすきだから」
「限度があるだろう」
へらへらと笑いながら幸せそうな顔をする彼女の頬をつまんでやりたい。誰がいつも介抱してやってると思ってるんだ。いつもそうだ。会社の飲み会で心配になるほど酔っては「迎えに来て」と連絡をして、おれが参加する飲み会では毎回介抱して、連れて帰る。そのせいで彼女が寝ただけで「シュウ〜!○○落ちたわよ」と呼ばれるようになってしまった。
「それに酔わなきゃやってられないじゃん」
説教のひとつでも言おうとすればやけに暗い顔でぼそっと漏らすように言われた言葉に目を開く。酔ってると思えないような沈んだ声だった。何かあったのだろうか。
「何か、」
「あ、もしかして、酔った私嫌いだった?!」
「いや、」
さっきとうってかわって元気な可愛こぶる声が出てビックリさせられる。酔っ払いは情緒不安定になるのだろうか。彼女の甘える時の顔で見られ咄嗟に否定の言葉が出たが、本心だった。
「酔っ払った君は嫌いじゃない。こうでもしないと君は素直に抱かれてくれないしな」
「直球……だって恥ずかしいから」
そっぽを向いても耳が赤いのはバレバレだ。照れる彼女の耳に口付けておく。
「……今日も、するの?」
「スウィーティー、そんな顔しないでくれ」
「あー!それ嫌だって言ってるでしょ!」
恥ずかしい!と言いながら怒る彼女は全く怖くない。照れる顔が好きでわざと呼んでると知ったらもっと怒るだろうか。わかったと言いながら一息置いて名前を呼ぶ。その時の顔といったら……。抱きかかえでもして早く家に帰ってしまおう。今すぐここで唇にキスしたら口を聞いてくれなくなるだろうからな。
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