あついきもち

炎のように燃え上がる瞳、バトルに必死になって鋭くなる眼光、楽しくてたまらないというかのように上がる口角、その顔を見るだけで顔が熱くなり、体中がびりびりする。
いつからこんな体になってしまったか正確には覚えてない。でもオーバを好きだと自覚する前にはもう始まっていた気がする。それからはバトル後は逃げたり、デンジに匿ってもらって熱が引くのを待っていた。でもそんなこといつまでもしてられない。面と向かってぶつけてみたらどうだと言うデンジのアドバイスを受け、今日はバトルが終わってもフィールドに立っていた。

「今日は逃げねーの?」

下を向いてる私を心配したのか頭に手をのせられる。何度か頭を往復した辺りでそっと顔をあげた。

「顔真っ赤だけど、大丈夫か?」
「ん、あつく、なっちゃった」

涙が出そうなくらい顔が真っ赤だが、目をしっかりと合わす。気づけばおでこに当てられていた手を掴んでいた。ねぇ、オーバ。私バトルしてるあなたに当てられてこんなことになっちゃうの。少しぐらい責任とって。

「……ははは、バトルに熱中しすぎたな!いいことだ」

私が掴んだ手を無理やり剥がすでもなく、ぺちっとおでこを叩かれ、離れた。その手を追えば彼の辛そうな顔が一瞬見えて追っていた手が止まる。「またバトルしような」とこちらも見ずに手を振り出ていく背中を見つめることしか出来なかった。



「デンジのバカ」
「八つ当たりするなら追い出すぞ」

彼に当たるのがダメなことはわかっているのだが、オーバにやんわりと拒絶されたあの日のことがずっと頭の中でぐるぐると回っていて嫌になる。辛そうな顔して、そんなに嫌ならもっと強く拒否してくれたらよかったのに。そんなことされたら一生立ち直れないけど。

「デンジー!今日もまた引きこも、ってんのか」
「ナギサで一番うるさいアフロが来やがった」

私を見て一瞬言葉に詰まらせ何事もないようにデンジに絡むのを見て泣きそうになる。そんなにあからさまにしなくてもいいじゃん。ここにいても苦しいだけだ。もう帰ろうと椅子から立ち上がり扉をくぐれば名前を呼ばれ意識しないように心構えしてから振り返る。扉の枠に手をついた彼が目の前に現れて心底驚いた。これは意識するなってほうが無理だ。あの時のショックなんて記憶の片隅にぶっ飛んで今、目の前の現状に心臓がばくばくする。

「帰る前にちょっといいか」

オーバは誰とも距離が近くて仲良くなると肩を抱いてきたり頭を撫でたりを普通にしてくる。でも手を繋ぐなんてしない人だ。なのに今は私の手首を掴んでナギサジム内を歩いていた。

「その、あーなんだ。確認したくて……この前のあんなこと誰にでもやってんのか?」

……私をわざわざ連れ出してお説教だろうか。ああいうのは誰にもやらないほうがいいぞって?なにそれ結局私のことは妹程度にしか見えてないのか。悲しく腹が立つような気持ちになり彼の胸板を叩く。

「私があんなこと誰にでもやってると思ったの!すごい恥ずかしいのに、そんな風に言うなんて、」
「待て、待て勘違いするなよ。やめろとか言いたいんじゃなくて、あ、あれっておれだけなのかなって」
「オーバだけにきまってるじゃん……オーバ以外にあんなこと言うわけない……」

あぁ、 もう涙が出てきた。胸板を叩いた手はそのままにもう片方で涙を適当に拭う。啖呵を切るように全部吐いてしまったせいでオーバがどんな顔をしてるのかなんて怖くて見れない。このまま抱きついてしまおうかと自暴自棄になった瞬間、顔を両手で包まれ上げさせられた。

「おい、泣くなって。あれが、おれだけだったらすごくう、嬉しいと」

思ったんだよ……と声が尻すぼみになっているが私には聞こえてアフロの色のように真っ赤になった顔を見上げる。

「……ほんと?」
「嘘言うかよ!あんな顔して何言いたいかわからないほど馬鹿じゃない」

そう言うオーバの頬を挟む。突然のことにびっくりして飛び退きそうになったが耐えていた。ああ、今度は嬉しさでキスをしてしまいそうだ。

「おれと気持ち一緒と思っていいか」
「うん。好き、大好き」

お互い顔が真っ赤だが気にせず抱き合う。このあとさっきと違って優しく手を繋がれて廊下を歩いた。このままずっとナギサタワーを歩き続けたいと思うほどこの時間を手放したくなくて心做しか二人ともゆっくりとしたスピードで歩いた。

「……聞かなくてもわかる。おれにその面見せるな帰れ」

デンジがいた部屋まで戻り目を合わせるとうんざりとした顔で手をふられる。それに「おい少しぐらいは聞いてくれよ!ライチュウは聞きたいよな!」と絡むオーバを横目にデンジに「ありがとう」と言えばおでこにデコピンを食らってしまった。

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