倍以上の仕返し

新大久保はいつだって人が多すぎる。今日は平日だからか歩くのも困難というほどじゃないけど。あ、タピオカのお店だ。夕星がこの前SNSにあげてたお店が向こうに見え意識がそこに集中する。それ以外見えてなくて気づいたら知らない人とぶつかってよろめいた。

「こら、○○前を向いて歩きなさい」
「ごめん」

高いヒールのせいでそのまま尻もちを着くかと思ったが、腰に腕がまわり彼の隣に戻っていた。「あそこにお店があるから」とまわった手を叩きお店を指させばムッとした顔をされる。反省してないわけじゃないからね!慣れた説教を受けたくなくて咄嗟に言葉を発した。

「よそ見するのは私が忍と手を繋ぎたいためかもよ?」

毎度よそ見をして注意されてるからそんな意図がないことはバレバレだが、自分の思う可愛い顔をして見上げればため息をつかれた。

「それなら察してやれなくて悪かったな。迷子になられたら困る。」

するりと優しく手を取られ口付けられる。外でそういうことするところがずるいし恥ずかしい。私が慣れていなくて固まっていると笑われた。

「このままなら迷子未遂の女の子として扱うがいいのか?」

「本当はどう扱われたいんだ」と耳元で言われ体温があがる。ここは外なのに家にいる時のように顔が真っ赤になり、口をぱくぱくさせるしかできない。それでも頑張って目の前で意地悪な顔をしてるであろう忍に「恋人扱いしてください」と目を見ずに言えば手を絡ませるように繋がれた。そんな手の繋ぎ方したことなくて自分の手が見れない。忍の顔なんて以ての外だ。

「そんな顔をするな」

彼から唯一見えてるであろう真っ赤な耳を触られ体が反応する。びっくりした声も彼にとっては面白かったらしい。私はそんな状態なのに彼は余裕らしく、「タピオカ飲みに行くか?」と呑気に言われた。何をすればこの男は照れるんだ。そう思いながらも「それどころじゃない!」と彼の腕にぎゅっとしがみつけば、つむじにキスを落とされた。

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