いつまで経っても冷めへんな

バーを出て程よく火照った体を冷ますように、私は零さんの車に乗って景色が綺麗なところでしゃべっていた。開けた窓からはいる夜風が気持ちいい。

「私まだ関西に住みはじめて二年なんですよ」
「だからか。あいつらと違う発音だと思った」
「さすがに地元のイントネーションはぬけなくて」
「なぁ、嬢ちゃんの関西弁聞いてみたいんだが、もっとラフにしゃべってくれるか?」

零さんのお願いにくすくすと笑ったあと本当に?って顔で見れば「ほら」と促された。

「……零さん上手やなぁ、そんなん言われても"コテコテの大阪弁"みたいなんはしゃべられへんよ」

方言はまだ染み付いたりしていないから少しの違和感と恥ずかしさを感じる。

「簓くんらとはちょっとちゃうやろ?やから恥ずかしいねんけど……零さんもなんかしゃべってよ」

私の関西弁を聞き逃さないようにするためか「うんうん」と頷くけど、しゃべってはくれない。私の声に集中してると思うだけで顔が熱くなった。

「方言も嬢ちゃんも可愛いな」
「からかわんとって」

ばしばしと彼の肩を叩けばその手をとられ指先に口付けられる。見つめる目はもうからかいの色を持っていなくて逸らせなかった。

「ところで……これからどうする?おれは無理強いはしない」
「聞かんでも詐欺師らしく騙してもいいのに」
「そうやって嫌われない自信もテクニックもあるが、嬢ちゃんには本気でいきたいだろ?」

無理強いはしないと言っておきながら瞳の奥には昂った熱がちらちらと見える。その瞳に囚われ熱さで焼け焦げてしまいそうだ。そのまま髪を優しく撫でられてしまえば私の答えは「いいよ」しかなかった。

「いいよ、零さん」

私が喉を震わせ絞り出すように出した声を聞いた途端、髪を撫でていた手を止め、ひと房とって口づける。「そんな、顔しないでくれ」と嬉しそうに、真っ赤になった私の頬を撫でる彼の手をとって仕返しのように口づけた。

「それじゃあ嬢ちゃんをはりきってエスコートしなくちゃな」

そう言って車のエンジンをかける。私はもうキャパオーバー寸前で零さんを見ていられなくて、車が走り出したと同時に何度も見慣れた外の景色を目に焼きつけるように眺めた。

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