赤ずきん

イヌアラシ公爵


赤いフードにふりふりのスカートカゴを片手にさげれば完成だ。このスカートの短さは恥ずかしいけど、ペドロさんやシシリアンさんに褒めてもらえたから大丈夫だろうと公爵の元に向かう。
「お見舞いに来ました」
「……どうしたんだ?その格好」
「ハロウィンだから仮装してみたの!公爵は犬でしょ?だから私は赤ずきん」
「私は狼ではないんだがな」
笑いながらも私の頭を撫でてくれる彼が優しくて、彼の目の前に花を並べる。頭を撫でる手が後頭部へと移動したのは、彼の顔が近づいてから気づいた。
「美味そうな赤ずきんだ」
フードは落ち、首から肩にかけて肌が露出される。細められた目と尖った牙に胸が高鳴り、動けずにいるとそっと公爵は離れた。
「なんてな、冗談だ」
「び、っくりしたぁ……」
安堵した様子を見せたけど、本音をいうと公爵に噛まれてもよかった。だからお茶を飲んでいる公爵のベッドにあがる。
「あ、の……食べてもいいよ。ここ」
「……ゆガラを傷つけるようなことはしない」
「噛まれたいなぁって……だめ?」
私が一度言い出すと聞かないのは公爵もわかってるはずだ。お願いするように見上げれば顔が首筋におりてきた。公爵が力加減間違えたら死ぬという緊張感と高揚感。息をするのも忘れて彼の耳を見つめていた。鋭い牙がゆっくりと肌に刺さる。肌が裂ける音がして少しの痛さに身をよじれば牙はすぐ離れた。代わりに生暖かい舌が傷を這い、先程とは違う感覚に身をよじる。
「もういいだろう。終わりだ」
「甘噛みなんだね」
「本気で噛んだら今頃ゆガラの肩はなくなっているぞ」
「ひゃー怖い!」
噛まれたところに指を添え撫でれば公爵は微妙な顔をしている。Trick or Treatなんて言える雰囲気じゃないなと自分からふっかけておいて、そんなことを思った。

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