9/5 クロコダイル
目の前に積まれているのは、お世話になっている方々からクロコダイルへの誕生日プレゼントのはずだが、もはや壁か?ってぐらいたくさんある。
「これどうされるんですか」
「使えそうなもの以外捨てる」
さすがに全部使えないもんなともう一度見上げていると、後ろから声がかかった。
「左から2下から7のワインとその2つ隣の真っ赤な箱取れ」
「はーい」
そっと抜き取り彼の前に並べれば高級な赤ワインと、グラスが出てきた。
「おれの誕生日だ。お前も飲め」
「グラス一個……」
彼が口付けたグラスをそのまま口元に持ってこられ、私の意思とは関係なく傾けられる。零さないように喉を必死に動かすが間に合わない。口の端から鎖骨へ流れてしまった。
「おれの服を汚すなよ」
彼の顔を見てみれば随分と機嫌がいいようで私が苦しんでるのを見てクハハと笑っている。空になったグラスを床に投げるのを目で追っていれば、鎖骨から首へ舐めあげられ体が震えた。これをするためだったのかと訴える暇もない。
「や、まって」
「赤ワインにして正解だったな。まだ飲むか?」
「いい」
「まァそう言うな」
私の体を這いずる手の指輪が冷たく、余計にびくびくと震えてしまう、それを楽しそうに見る彼にまた赤ワインを注がれ、私は誕生日プレゼントどこに置いたかなとどうでもいいことを考え気を紛らわせるしかできなかった。
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