140字SS 海賊2

君をお買い上げ/レイリー
シャッキーの店でパンケーキを食べていれば昨日と同じ時間にレイリーがやってくる。手をふればにこっと笑われた。
「シャッキーとりあえず酒と君を」
君と言いながら私に手を差し伸べてくるのに慣れた私は「はいはい」と言いながらカウンターに向き直る。その瞬間体を思いっきり彼側に引っ張られ膝の上に着地する。逃げられないというように腰には手が回っていた。
「今日は本気で連れて帰りたいんだが」
いいかな?と聞いておきながら拒否権なんて存在してない言い方に助けてとシャッキーに手を伸ばした。


お好きな方をどうぞ/レイリー
レイリーさんの膝に跨り擦り寄る。彼が腰に手をまわしてくるのを遮って選択肢をだした。
「今日は私が動くのと私が見せるのどっちがいい?」
「どっちもはないのかね?」
「だめでーす」
「じゃあ私がするというのは?」
「それいっつもと変わらないじゃん」
二人でクスクスと笑っていれば押し倒され「まって答え聞いてない」という声も遮られた。


君をお買い上げ/マルコ
元仲間で元恋人の彼が目の前に現れたと思ったら私の目の前に酒を置いた。
「白ひげ海賊に戻ってこいよ」
「もう役立たずの私に言う?」
「隊員としてじゃねェ、おれの恋人としてナースになって乗れよい」
「勉強は必要になるがな」と笑う彼はこんな辺境の島にくるほど私が欲しかったのだろうか。そう思うと求められてる気がしてきて「仕方ないな」と久しぶりに彼に顔を寄せた。


好きだって言ったら逃げるくせに/マルコ
「タバコ一本もらえるか」
甲板の端で煙草をふかす背中に声をかけた。振り返った顔はにこにこと上機嫌で煙草を手に火を要求すれば勝手につけてくれる。その上おれの体にぴたっと寄ってきた。
「どうした?機嫌が良すぎて気持ち悪いよい」
「今はそんな言葉効かないよ、新しい酒が手に入ったの」
いつもなら酒瓶一個分開けるくせにそんなにくっついていいのか?楽しそうに鼻歌を歌う彼女を見えないところで恨みがましく睨むぐらいは許してくれよい。


置いていかないで/ブルック
彼は数十年という孤独な時間を過ごしたからか、置いていかれる側の気持ちが痛いほどわかる。だから今私が彼に縋っていても拒否の言葉を一切口に出さないのだ。
「ブルックは私を置いていかないよね」
「置いてなんて行きませんよ、私があの世の門までエスコートしますから、ずっと一緒です」
一緒という言葉を何度も噛み締め、肉などない体に抱きつけば「門までは、門までは必ず」と小さな声で呟き痛いほど抱きしめられた。


もしも魔法が使えたならば/ブルック
私たちの中で「もしも」は厳禁だ。誰かが決めたわけじゃないけど、そんなこと言い出したらキリがないから。
「けど、一つだけいい?」
「なんでしょう」
「もしもが叶うなら、もっと早くにブルックに会いたかった」
「……私もです。骨になってしまう前にあなたを抱きしめたかった」
もしもなんて今日この時しか言わないから叶えてなんて、我儘な想いを神様に吐露するのを許して。


一緒に帰ろう/ブルック
朝ルフィと喧嘩して飛び出たまま何時間も経った。怒りなんてもうなくて、今はただ悲しみが全身を包んでいる。一味やめないといけないかな、ルフィに嫌われたかな、考えれば考えるほど辛くなりついに草むらに寝転がる。すると、見たことあるズボンと靴が目に入った。
「ルフィさんもう怒っていませんよ、貴方のことを探しています」
「嘘だ」
「嘘じゃありません、帰りましょう。謝るとき必ずそばにいますから」
「手も握ってくれる?」
「ええ、勿論です」
起きようとすれば手を伸ばしてくれて、その手を握ったまま船までの道を歩く。ブルックがいるならどんなこともできる気がした。


好きにならないはずがない/ブルック

私が一人寂しくアクアリウムを眺めているとそっと入ってきた。「一曲練習したいのですが、よろしいですか?」
と言うからいいよと言えば悲しく、暖かい懐かしいような曲を演奏されて涙が堪えきれなかった。
「演奏で泣いて頂けるのは演者として最高の喜びです」
「私がそういう気分だって知ってた?」
「なんのことやら」
そんなことを言いながらも私を優しく抱きしめてくれて肩の骨におでこをくっつけた。


頬が赤いのも気のせいってことにしてあげましょう/ブルック
船も海もまるでこの世界には赤という色しか存在していないというほどに真っ赤に染め上がっていて、目がおかしくなりそうだった。その赤の中、優雅にヴァイオリンを弾くブルックに寄り添い、「好き」という言葉ばかり吐いていく。
「今日は積極的なんですね」
「景色とブルックが綺麗だからね」
「では、私もひとつ。……愛していますよ」
その言葉に心臓が魚のように飛び跳ねる。でも、動きで照れているのがバレると焦って平静を保った。
「先程から心臓が激しい音色を奏でていますね」
「気のせいじゃない?」
ヨホホと笑う彼に下手くそな嘘を信じてくれと目を逸らした。


ほしいのはそっちじゃない/ドレーク
「あなたに着いていきたいです」
そう何回も言ったのにいつも「やめておけ」で終わり。今日こそはと近づいて同じように述べれば次の瞬間頭を掴まれ壁と衝突した。意識がぼんやりとして、このままでは失神する耐えなければと唇を噛む。
「悪いがお前は連れて行けない」
もう一度「すまない」と辛そうな顔で謝られてブラックアウトした。
起きてみれば手の中にあったのは彼がいつもしていたスカーフで、こんなもの置いていくなら私も連れて行ってよとスカーフを握りしめた。


隣に違和感、視界に不具合/カタクリ
ゆらゆらと揺れる視界をうっすらと開き酒瓶に手を伸ばそうとすれば誰かの手が伸びてきた。「あ、スムージーさんごめんなさい、飲みすぎちゃった」と言おうとして顔をあげれば目つきの悪い男が座っていた。
「飲みすぎだ、まだ飲む気か」
「かたくり、さん」
「そんなに酔っているならおれが部屋まで運んでやってもいい。ただし、報酬は貰う」
まるで仕事の時のような口ぶりに面白くなり笑っていたが、部屋に戻ってからは笑う暇なんてないぐらいに報酬を奪われた。


好きにならないはずがない/キラー
「この前食べたがっていたケーキだ」ってケーキを食後にだしてくれたり「コーヒーはいるか?」って美味しいコーヒーいれてくれたり「寒いだろう」とブランケットをかけてくれたり、私甘やかされすぎじゃないだろうか?それを本人に言うと「甘えておいてくれ」と頭を撫でられた。
これって意識していいのかな……。


名前を教えて/キラー
目の前の人達が肉塊と化す。横から跳んで入ってきたかっこいい人の背中を見つめた。
「ありがとう、名前聞いてもいい?」
「勘違いするな。たまたまおれたちが倒すべき相手だっただけだ」
「じゃあ私、運がよかったのね」
「それと名前、教える気はないが気になるなら後ろの壁を見ればいい」
去っていく彼の仮面を覚えようと必死に目に焼きつけ、後ろの壁を見る。色んな手配書に並んで特徴的な仮面が見え、そっと剥がして抱きしめた。
KILLER……キラー。どんな声であなたを呼ぼうか。


/ホーキンス
喧嘩した時だって謝ろうと思ったときに彼は「悪かったな」って謝るし、私が好きだって伝えようと思えば「愛している」と言ってくる。いつも先を越されてもやもやする。
「ホーキンス、私は!」
「愛している」
「っ、また」
「言わなくても全部わかっている」
優しい顔をして頬を撫でられ「でも、一番に言葉で伝えたいよ。愛してる」と彼の髪にキスを落とした。


餌付け/カポネべッジ
「そんじゃあ、このままログポースのまま進み……おい」
「はい」
「それで誤魔化せてると思ってるのか」
「はんのほとへひょう」
ぱんぱんに膨らんだ片頬とは反対の頬をつまみ引っ張る。
「ひたたたたた、へへへ」
「おれのつまみを食うとは、」
頬を引っ張ってるのになぜか口からは笑いのような声が漏れている。本当に呆れたやつだ。
「おい、料理長こいつの菓子出してやれ」
これだから頭目は甘いって部下に言われるんだろうな。


/ルフィ
「今日寝たくないなぁ」
隣のルフィはすでに夢の中で彼の頬を撫でながら言えば、ばちっと目が開いて飛び退いた。
「うぇ」
「どうした、何か怖いのか?」
「違うけど……びっくりした」
「おれが全部ぶっ倒してやるから何にも心配ねェぞ!」
そうじゃないけどなという言葉を飲み込んでルフィの横に寝転ぶ。マキノは昔こうしてくれたと言いながら私のお腹をぽんぽんと叩き静かに歌う彼を見つめ、 目を閉じた。


ねぇ、ダーリン/ルフィ
海賊、賞金首、麦わら、ドラゴンの息子、エースの弟、第五の海の皇帝、彼だけで色々な呼び名がある。彼は“海賊王になる男"と呼ばれたほうが嬉しいのかもしれないけど、私達仲間はルフィと呼ぶ。でも、特別な仲の私ぐらい違う名前で呼ばせてよ。そう言って慣れない呼び方をすれば彼は「ん?おれか?」と不思議そうな顔をしたあとにししと嬉しそうに笑った。


諦めきれない/サンジ
いくら傷を布で圧迫しても布が赤く染まるだけで何の役にも立たない。チョッパーはまだなのかと怒鳴る声がぼんやりと聞こえる。傷を圧迫する手の上の水滴を見て気づいた。おれ泣いてるんだ。
「おれさ、意外と諦めの悪い男なんだ。嫌がられても地平線の先まで追っていくよ。だから、届かないところには行かないでくれ」
医学がわからないおれをひたすらに憎んで、遅くなってきた脈拍にやめろ止まるなと何度も叫んだ。


幸せを、(と祈るだけならば)/ゾロ
おれ宛に手紙が届いた。
そんなの今まで航海した中で一度もなく、仲間も興味津々で齧り付いてくる。開ければ懐かしい花の匂いがする。それだけで誰が書いたかわかるおれは案外女々しいのかもな。仲間から離れ内容を読み、もう一度手紙に鼻を寄せる。もう会えないほど遠いが、お前を守ってくれるやつが出来たならいい。柄にもなく感傷に浸ったあと、手紙を懐にそっとしまった。


「酒分けてやるよ」/ゾロ
「あぁーゾロ助けて」
「おれは持ってねェぞ」
「知ってる」と言いながら昼寝する彼の膝に頭をのせる。どうもこうも禁煙させられてイライラが止まらない。チョッパーの頼みだから断れないし。
「おれがイライラ消してやろうか」
「お願い!」
やった!とお腹を空かせた鮫のように食いつけば、木刀を握らされ素振りが始まり「なんかご褒美とかは……」と弱々しい声で尋ねた。


君とだからできる/ナミ
周りには黒く焦げたり、切り傷がある海兵が倒れていて、私は肩で息をしていた。
「結構しんどかったわね」
「けど、ナミがいてよかった。ちまちま倒しててもケリつかないし」
「まぁね、謝礼つけてくれてもいいのよ」
手をお金の形にするナミにそれはちょっとという顔をすれば笑われた。
「嘘よ、私もあんたがいたおかげでやる気でたしね」
そうなの?と頭にはてなを浮かべればナミはもう海兵のポケットを漁っていて、それ以上の言葉は聞けなかった。


花言葉で愛を紡ぐ/ウソップ
「どう見ても両思いだろ」
そんな言葉はもう聞き飽きた。あいつもおれも、もたついてるのはわかってる。けど、最後の一歩それがどうしても踏み出せなかった。だが、二年だ。二年も経った。ヘラクレスンに鍛えられたおれはひと味違う!
「これ、お前に似合うなと思ってよ」
「ありがとう、私もこれ」
赤のアネモネと赤のバラをお互いに差し出す偶然に二人で笑ってしまった。どこまでおれたちは不器用なんだろな。


砂糖菓子のように甘く/フランキー
「アゥ!元気がねェな!それならこのコーラを」
「いらない」
即答してしまったのは悪いけど本当に今は気分じゃない。どっかいってと膝を抱えれば硬く冷たい金属に包まれた。
「別にワケを言う必要はねェ。ここにいる間はおれがなんでもしてやるよ」
そう言いながら私を抱えベッドに入る。
「まずはスーパー!心地いい添い寝からだ」
彼の腕は金属で出来てるけど、胴体は温かくて「スーパー寝れそう」と言えば頭を撫でられた。


でも、明日怒られそう/ロビン
ロビンが何を読んでるか、どんな本でロビンは出来ているのか知りたかった。だから本棚の本読んでいい?と聞いたら「ええ、いいわよ。どんな本でできてる?って面白い質問ね」
って笑われてちょっとどぎまぎした。
「あなたはどんな本でできてるの?」
「もう覚えてないな、本屋に行ったらわかるかも」
「じゃあ行きましょう」
懐かしい本を見ると欲しくなってあれやこれや買ってしまい両手いっぱいになったけどロビンと楽しい話ができたからいいや。


待て、は得意じゃない/ジンベエ
どんと勢いよく抱きつけば受けとめはしてくれたけど、すぐ剥がされた。
「お前さんはなにもかも急すぎんか」
「だってハグしたくなったから」
「すこし我慢してくれあと、」
そう言い終わるかぐらいに襟を掴んで軽く引っ張った。それだけで何したいかわかったのか拒否の声を出そうとする。それすらも言わせないと勢いよく引っ張ってキスすると「お前さんなァ、」と説教が始まる予感がして逃げ出した。

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