140字SS 海賊

この、リア充が!/シャンクス
※第三者視点
「そっち寒いだろ」
さっきまで酔ってたはずのお頭は目敏い。航海士が腕をさすってるのを見て当たり前のように抱き寄せた。そこまではいい。その後だ。ここは宴の最中の甲板なのに、後頭部に手をまわし彼女に口付ける。「見られてるぞ」と彼女に言った辺りで目を逸らした。見えはしないが啄むようなキスをして船内に戻っていく音がする。
ああ、クソ!だしにされた!


忘れてあげる/シャンクス
「今お前の目の前にいるのはゴロツキだ」私に言ってるのか自分に言い聞かせてるのかわからないような声色に「わかってる」と返せば服を脱がされる。目が布で覆われてるせいで、優しく肌を撫でてくる手が次どこに行くかなんて見えなくてびくびくと体が跳ねた。
ゴロツキはそんな優しく抱かないのよ。けど黙っておくわ。今あなたは赤髪のシャンクスじゃないものね。


いつかの夢の続き/シャンクス
赤髪海賊団が島に来たと聞いたとき、すでに幻かと疑った。けど、幻じゃないらしい。
「遅くなって悪かった」
「随分おじさんになっちゃって」
「お前は綺麗になったな」
「乗れよ」と手を差し出し、船へ続く階段に足をかけた彼の手を取った。まずはこの十年の間の話を聞かせて。それからグランドラインに連れて行って


おれのためだけに生きて/シャンクス
彼女は断固として船へ登る梯子に足をかけてくれない。それどころか船に近寄ってすらくれないのだ。
「私は行かないよ、あなたの邪魔になる」
「おれが邪魔って言ったことあるか?」
「私がそう思ってるの」
力づくで連れていくことなんて簡単だけど、そんなことしたら一生おれに心を開いてくれなくなるのはわかっている。
「なぁ、頼むよ。おれにはお前が必要なんだ。お前の人生をおれにくれ」
頭を垂れて頼むおれは必死すぎて格好悪いか?


幼馴染、やめたいんだけど/ベン・ベックマン
目の前に立っているのはあの時より随分綺麗になった幼馴染だった。それだけなら感動の再会かもしれないが背負ってる白のコートは無視できない。
「久しぶりねベック。ちょっとやんちゃになりすぎじゃない?」
「お前こそ。そんなに頭固かったか?」
そんな言葉の応酬に口だけで笑えば愛用の銃を振りかざした。


嘘、だったりして/ベン・ベックマン
酒場で一人飲む黒髪の男に娼婦のように撓垂れる。私と目を合わせると酔っ払った面倒な客のように腰を撫でてきた。
「夜寂しいの、一緒に過ごさない?」
「いくらで?」
「やぁね、金なんていらない」
「奪うから」と耳元でそっと呟けば嬉しそうに片方の口角をあげる。力強く抱き上げられ酒場を後にする彼も私も「さすが海賊」という言葉を飲み込んだ。


大切だったはずなのに/ベン・ベックマン
寝た彼女を置いて服を着る。惜しくなって彼女の肩にキスを落とした。煙草を燻らせ考えにふける。自分の手の届く範囲に置いて守りたい。しかし、そばに置くことで余計な危険を被せることになる。それならここに置いていくほうがいい。三時間前に出した結論にもう一度自分で納得して立ち上がった。
大切にするって何なんだろうな。悪い、おれはこうでしか大切にできない。


甘えてよ/ベン・ベックマン
ベッドに座り本を読む彼の横へずりずりと寄れば彼の二の腕におでこを当てた。
「なんだ」
「そのままじっとしてて」
優しく彼の頭を掴み私のほうへ倒れてくるように引っ張る。彼はわけも分からない顔をしていたが、言いなりになってくれるらしく、私が微調整を繰り返す間もじっとしていた。
「完成」
ベックが見あげてくるのが珍しく、髪の毛をくしゃくしゃと解しながら彼がしゃべる前におでこ同士をくっつける。
「うんと年下だから恥ずかしいかもしれないけど少しは甘えてね。私はベックの恋人なんだから」
返事の代わりなのか少し離れていた唇がおでこに優しく触れ、この幸せな空間を逃さないよう温かさを腕に閉じ込めた。


/ベン・ベックマン
禁煙。その言葉を出しただけで目の前の彼は眉間の皺を深くした。
「そんなに怖い顔しないでよ。 一週間だけだし、私も禁煙するから」
「お前は元々そんなに吸ってないだろう」
「じゃあベタでいこう。口寂しくなったらいつでもキスしていいよ」
ベタすぎるが彼が禁煙するんだからこれぐらい褒美があってもいいだろう。茶化しでウィンクして投げキッスすれば、やれやれという顔をする。
「お前の唇にそんなに価値があったとは驚きだ。だが、言ったな?」
皮肉に皮肉で返してやろうと思えば顎を掴まれた。いつもより口角があがっている。
「"いつでも"いいんだろ?いつしても文句言うなよ」


また夢の中で会いましょう/ベン・ベックマン
おれの腕より一回りは細い腕がそっと首にまわり形を確かめるように抱きしめられる。おれは彼女の腰を抱きたいのにそれができず、腕は中途半端な位置で止まっていた。
「月を見るとあなたを思い出すの。静かで聡明なあなたを」
「夕日を見るとお前を思い出すよ」
べらべらと普段言うよりもっと大胆で月並みな口説き文句が口をついて出て心の中で笑う。
「そんなに言わないで、次の楽しみに取っておくから」
「次、か?」
彼女の顔を覗き込もうとした瞬間、おでこに激痛が走り、起きる。いつものベッドの上だった。島で会った彼女のことをこんなにも考えてるとは。今も尚、冷えたシーツの上、お前の身体つき、頬の柔らかさを目を閉じ、思い出すのは女々しすぎるか?


覚悟は出来てる/バギー
「このバギー様についてこい」
そう言われたときは手をとることで精一杯でこれから先何をさせられるかなんてわからなかった。でも、もう大丈夫だ。バギーのためならなんでもできる。そう思いナイフを振り下ろした。
「よくやった」
「ご褒美は?」
その言葉に少し視線を泳がせたあと腰に手がまわされ、血がついたままの顔を彼に近づけた。


あの星を狙え!/バギー
この島の崖で流れ星に願い事をすれば願いが叶うなんて馬鹿げたこと信じてはいねェが、ログが溜まるまでまだ何日かある。暇つぶしにと来たはいいが、流れ星はいつだ?
「流れ星降らないね、お願いごといっぱいしようと思ったのにな」
「願い言ってみろよ」
どうせしょうもねェことだと聞けば「バギーが健康でいれますように」だの「みんなが長生きできますように」だの平和ボケした願いで「星は叶えてくれないのかな」と悲しそうな声で言う。あァ?叶わねェわけねェだろ!ハデバカ!今すぐに星を撃ち落とせ!カバジに命令するように叫べばそんな無茶ぶりを!と悲鳴をあげた。


はい、あーん?/バギー
もうその辺に酔いつぶれた人が転がっていて、宴なんて可愛いものじゃない。私はそれを横目に残った料理を食べる。
「おめェ、もっと飲めよ」
「やだ、バギー私のこと潰すじゃん。そこのミニトマト取って」
「それはおめェが弱いからだろうが」
そう言いながらも切り離した手でミニトマトを掴み私の目の前に持ってきてくれて「あー」と口を開けば放り込まれた。


そうだったけ、覚えてないや/キッド
「これお前に噛まれたときの跡じゃねェか」
「お前あんときと変わんねェな!前も、」
「喧嘩したとき壁の修復やらされたよなァ」
そうやって付き合ってた頃の傷をキッドはたまに話す。もう何度そんな話をしても思い出ではなくてただの傷なのに。思い出すことが嫌で上の空で返事する私は嫌な女だろうか。そんなことを考えながら痛みを訴えかける古傷を手で押さえつけた。


頬を伝う雫/キッド
男ってのは女の涙に弱い。だから酒場で男を落とすとき、失恋した女のようにめそめそ泣いておくの。「大丈夫?」「一杯付き合うよ」そう寄ってくるのを待ってまた泣く。そうしてると、顔の横を酒瓶がすごい勢いで通り過ぎた。
「うるせェぞ」
「.……慰めてくれるの?」
図太い女と思われただろうか?
「女の慰め方なんて一つしかしらねェ」
彼は呆気にとられたあと、片方しかない腕を私の腰にまわし、二階の宿へと歩き出した。


おれを呼べよ/キッド
敵船の戦闘があり、リペルでさっさと片付ければキラーが宝物庫の報告をしてくる。悪魔の実はないが、宝石があるだけマシか。
「ただいま」
「お、まえ!大丈夫かすぐ手当を.…」
「ヘマしやがって」
動じたキラーとは対象におれは少しも焦りの気持ちは湧いてこない。それどころか「助けて」って言えば助けてやるのに馬鹿だなと思って、彼女のざっくり斬られた肩の血を手で拭い舐めた。


わかったか、あほ/キッド

小突くときに本気を出さないのも、怒る時に物をぶっ壊さないのも、隣に座るのを許すのもお前だけだ。こんなにおれが特別扱いしてやってんのに少したりとも気づかねェ。その神経は鉄で出来てるのか?と疑うほどだ。その彼女が今目の前で目を伏せて新聞を読んでいて、その新聞を奪い顎を掴んだ。
「おれ以外を見るんじゃねェぞ」
ここまで言ってやればわかるだろ


本気にしないよ、それでいい?/ギン
おれが一度ゴロツキから守ってやっただけで懐いてきたコイツはおれが冷たくあしらおうと無視しようと後ろをちょこちょこと着いてくる。鬱陶しくても女だから怒鳴る気にはなれなくて。おれが目を合わせれば染め上がる頬、話せば動揺し吃る言葉、それだけで判断材料は十分で「好きです」と言われても驚きはしなかった。試しに頬に手を伸ばすと小動物が追い詰められたようにビクビクとしていて「へェ」という声が漏れる。背中の辺りがぞわぞわとするのを無視して、まァ退屈しのぎにはなるかと口に食らいついた。

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