7/16 ヘルメッポ

廊下の先からコビーとヘルメッポが歩いてきていて即座に呼び止める。コートの内ポケットに入ってるものを取り出そうと手を突っ込みその姿勢で固まった。

「どうしたんだ?」
「なにかありました?」
「あったというか、有るものがないっていうか」

怪訝な顔で見つめられ汗をかく。まさかプレゼントを忘れてきたとは言えない。何事もなかったようにポケットから手を出しハンズアップした。

「引き止めてごめん、話がしたいと思っただけ」
「はァ?まぁいいけどよ」
「ちょうどいいですね、今ヘルメッポさんにケーキ買ってこようと思ってたんです。カフェで話しますか?奢りますよ」

コビーはあまり奢るとは言わない。いつも気づいたら会計を済ませている。それなのに今日言うってことは、ヘルメッポの誕生日だからだ。そこで誕生日知らなかったのを装うのは失礼だし、知っていたら知っていたらで何故何も用意してない?ってなる。そんなこと彼は言わないだろうけど。

「あああああやっぱりちょっとまって!!」
「なんだなんだ、今日おかしいぞ」
「……ヘルメッポの誕生日プレゼント家に忘れてきた」
「そのくらいいいだろ別に、あとでくれよ」

深刻な気持ちで打ち明けたのに返事はあっさりで「行くぞ」と手を引っ張られる。コビーはずっとニコニコとしていた。

「え、取りに帰るの間に合わないから明日になっちゃうよ、いいの?」
「あとで家に取りに行く、それでいいだろ」
「い、いいけど」

自然と繋がれた手の体温があがるのを感じながら隣を歩く。海兵の視線が集まってる気がして顔も赤くなってきた。

「先にキスのプレゼントくれてもいーけどな」
「え!」
「いいようそ、っ」

私をからかうように笑って言う彼に焦った私は、やるしかないと背の高い彼の後頭部に手をまわし引き寄せた。勢いがよすぎて歯がぶつかる前に止めゆっくり口付ける。さっきまで海兵の視線が気になってたのにもうどうでもよくて、ヘルメッポのサングラスがかちゃかちゃと顔にあたる音と唾液が混ざる音だけが廊下に響いていた。

「っは、ここ廊下だぞ」
「ヘルメッポがしてって言ったんだよ」
「二人ともとりあえずここ離れましょう」

続きをしそうな私たちを苦笑いしながら引っ張ってくれるコビーに感謝しながら、手は離さず歩く。ここからカフェまでどれくらいあるっけ?今日何食べようか。さっきと打って変わってそんなことで頭の中いっぱいだったのに、繋いでた手を引っ張られ耳元に口を寄せられた。

「今日家行ってもいいよな?」

その言い方はさっきとは違う意味が含まれていることに気づいたけど「いいよ、プレゼントあげたいから」とすっとぼけて返事をしてコビーの後に続いた。

[ 11/47 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -