1/10 キッド
今日がおれの誕生日だってことは嫌でも覚えてる。おれは誕生日なんて気にしねェのに毎年毎年キラーや部下が祝うから覚えざるをえなかった。なのに今日は船は静かだしヒートもワイヤーもいねェ。あいつも見当たらなくて船内を散策途中キラーの部屋の前を通れば、わいわいと騒ぐ声がいくつも聞こえ扉を無言で開けた。
「おい、なにし」
「キッド!いいタイミングに来たな。来い」
キラーが一番手前にいて声をかけられ、言われた通り中に入ればおれに背を向けて座ってるあいつとそれを囲むヒートとワイヤーがいた。
「頭!これはおれら3人からの誕生日プレゼントです」
「驚いて固まるなよ」
茶化してくるキラーを無視しあいつに目を向けるとゆっくりおれのほうを向いた。
「……」
「、どうかな」
「馬子にも衣装」
「キッド耳真っ赤だぞ」
驚きながらもなんとか返したのに、キラーのせいで台無しだ。「うるせェ」と一刀両断した。
「あー、私がプレゼントそのものらしいです。……どうぞ」
顔を真っ赤にして両手を広げるのを見て、キラーやりやがったなと思いつつも彼女を抱き上げる。
「宴の華ぐれェにはなるだろ、酒注げよ。おい!宴だ!」
「わかったわかったから耳元で叫ばないで。……誕生日おめでとう」
耳が赤いことを言わせないように船に響く声で言えば、それとは反対の囁き声の祝いの言葉と共に頬にキスされた。
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