指輪

道を尋ねてきた男の人に口頭じゃわからないと言われ一緒に目的地までついて行ってる途中少し遠いところにサカズキさんがいた。思わず手を振ったのだが背を向けて行ってしまって、少し悲しくなるが気づかなかっただけだろうと頭の奥に追いやる。それに、案内した人にお礼にケーキを貰ってしまって夕方にはすっかり忘れていた。

「昼は随分と楽しそうじゃったな」

家で晩ごはんの用意をしたりバタバタとしているとソファから声をかけられた。

「あれ気づいてたの?」
「なにしよった」
「道尋ねられて、目的地まで一緒に行ったの。お礼にケーキまでもらっちゃって」

喜びの表情で話せば彼の顔が曇っていく。あれ?怒ってる?嫉妬しているのだろうと決めつけ彼の膝の上に座った。

「危ないことしてごめんね。もう着いていったりしないから」
「お前のお人好しが治らんのはしっちょる。手ェだせ」

おずおずと手を出せば力強く掴まれる。彼の人差し指からマグマが出ているのを見て血の気が引いた。

「まって、なにするの、ねぇ」
「こうすりゃァ、話しかけてくるやつは減るじゃろ」

何をするのかわかって目を閉じたいのに一向に瞼は降りてくれない。指が近づくのがスローモーションのように見え、薬指の感覚が一気になくなる。痛いの限度を超えたような、痛いなんて言葉じゃ表せない感情が湧き出て、目の前がちかちかして目を閉じ歯を食いしばるしか出来なかった。

「うっぐ、」
「見てみい、綺麗にできとる。……なんじゃ?泣いちょるんか」
「いたかった、」

忘れてた、サカズキさんは私が泣けば興奮する人だった。そのせいか傷に舌を這わせ刺激するように何度も往復させてくる。目の前が見えなくなるぐらい泣けばその涙さえも舐め取られた。

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