禁断の果実は必要ない

目を瞑り穏やかに寝る彼の心臓があるあたりに手を当てたあと耳を寄せた。とくとくとくと血の流れる音がする。これなら寝れそうだ、と目を閉じようとすると頭を撫でられる。

「ぴったりくっついてどうした」
「心臓の音聞いてるの、安心するから。邪魔?」
「いや。」

くくくっと笑われ恥ずかしくなり頭を離そうとすると固定された。

「なに」
「おれもよく寝れなくなるとお前の脈を測る。同じだと思ってな」
「ベックもするんだね」
「不安になるからな」

手首を掴み脈を親指で軽く押さえられる。目を閉じれば自分の脈とベックの心音しか聞こえなくてこの世に2人しかいない気分になる。

「変なこと言うけど引かないでね」
「なんだ?」
「この世界に2人っきりみたい」
「そんなにロマンチストだったか?」
「ベックきらい…」
「嘘だ。」

からかって笑うベックをよそに目を閉じおやすみと言えばおやすみエヴァとおでこにキスされ心臓が共鳴した気がした。

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