私より先に
昔見た美術館にある石膏の体のように綺麗に筋肉がついた体をするりと撫でる。お腹を触るのは誘ってるみたいだからやめたけど、鎖骨から肩、そこから下の何もないところを撫で、目が離せなくなった。
「ん、〇〇どうした」
「何も。ただ触れてたいだけ」
縁を指でなぞって断面に手を添える。そのまま彼の肩に顎を乗せた。これは嫉妬なんだろうなとただなんとなく思う。張り合っても仕方ないのに、勝てるわけないのに、あの子には腕をあげたのかと唇を噛んだ。
「今日はずっとこうしててもいい?」
「あァもちろんだ」
蝋燭が一本灯っているだけの部屋で彼に体を預け目を閉じる。腕を撫で、背中にまわった片方だけの腕を感じながら、もう何も失ってほしくないなと目を固く閉じた。
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