方向音痴

私は道を東西南北で把握してない。右から来たとか左から来たとか島によって山がある位置は違うけど山側が上とか。そんな人間だから新しい島に着く度に迷っては結局、適当なところから海に出て遠回りして船へ帰っている。それを繰り返していればさすがに見兼ねたのか、降りる度にベックがついてきてくれるようになってしまった。

「確かこっちから来たよね」
「違うな、こっちからだ」
「あ、そういやここ通ったな」

一度通ったところは絶対に忘れない上に頭の中で地図が展開できるらしいベックに一度任せたら歩きやすさが段違いだ。

「もう全部ベックに任せるよ。私ここから船が東西南北どこなのかもわかんない」
「東だな」

私の寄りたいところを的確に一番近いルートで歩いているだろう彼に腕を絡めて寄りかかる。自分じゃ寄り道もできないから楽しい。


もう日も暮れてきて欲しいものも買えたしとうきうきで彼の隣を歩く。あとは帰るだけだと「こっち?」「違うな」を繰り返して彼が立ち止まったのは宿屋の前だった。

「え、」
「全部任せるって言ったのは〇〇だろ?」

笑って絡めた私の手を取り指先にキスを落とす。嵌められた!と思ったが既に遅い。悔しいと睨むように彼を見れば「嫌か?」と聞かれ「何から何までずるい!」と人目も気にせず叫んだ。

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