悪戯は程々に

書類仕事をキリのいいところで終わらせ休憩にカフェに来ていた。コビーもヘルメッポも甘いもの好きだし、私も大好きだからよくこの三人でスイーツが美味しいカフェを見つけては訪れている。

「ティラミスもいいけどチーズケーキも食べたい!」
「おれこのストロベリーチーズケーキにするから一口食べればいいだろ」
「そういう男前なところ好き」
「じゃあ僕はフルーツタルトにします」

「それも一口頂戴ね」とコビーと言葉を交わし各々注文をする。海軍の仕事は大変だけど三人で居るときだけは何も気にせず過ごせる。ちらっと頭をよぎった上司のクザンさんとかクザンさんとかクザンさんとかは投げ捨てておく。

「その顔、仕事思い出しただろ。やめろって今休憩なんだから」
「気になるのもわかりますよ。海軍本部は目と鼻の先ですから」
「今忘れるから待って」

完全に目の前の二人に思考をチェンジし、他愛もない雑談をしていればケーキがきた。思っていたより美味しそうで、フルーツタルトなんてフルーツがきらきらとしていて綺麗だ。

「ティラミスとても美味しそうですね」
「ね!一口どうぞ」
「いいんですか!」

意気揚々とフォークを私の皿に近づけてくるのを寸前のところで腕を掴んで止めた。

「どうしました?」
「まってね」

私が止めたままじっと待ってくれてる間に反対の手でケーキを一口に切る。そこでヘルメッポは何するか気づいたのか、げぇという顔をした。それでも止めてこないのは面白がっているのだろう。

「はい、あーん」
「そんな、そこまでしてくれなくても、」
「ほら」

わたわたと焦りヘルメッポに助けを求めるけど、彼は肩を竦めるだけだ。もう一度ぐいっと近づければ戸惑ったあとそっと口を開いた。

「どう?美味しいでしょ」
「……味なんてわかりません」

やけに俯いて咀嚼するなと思っていればあげた顔を見て絶句した。真っ赤だ。そんな顔で口を押さえ目を逸らしながら言われれば、さすがに私でも想いに気がついて、さっきまではなんともなく掴んでいた腕が急に熱くなった。

「ご、ごめん」
「いえ、」
「……おい、おれがいること忘れるなよ」

腕を離したけど何か言えるわけでもなく、何か話題、何か誰かとよそよそしい雰囲気の中、苦しんでいるとため息をつかれる。けど、今はヘルメッポの悪態でもなんでも全てが救済のようでありがたい。熱さを取り戻さないようにコビーをあまり見ず、ヘルメッポの言葉に食いついた。

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