ギャップ

コビーとはここ二年ぐらい一緒にご飯食べたりする仲で、休日もよく遊ぶ。二人っきりじゃなくて、そこにヘルメッポも含まれているけど私達は三人で仲がよかった。
今日はヘルメッポが休みを取れなかったから、二人で遊びに来てたのに、なんで私は今、手を引っ張られ街の中を駆け回ってるんだろう。コビーが海賊に海軍大佐ってバレたせいなんだけど。私は足でまといだからか、ひらけたところで大人数と戦うのは分が悪かったのか、彼はすぐさま走り出した。原因とかわかりきってはいるけど、少しでも現実逃避をしたくて考え事をしていたせいか石に躓いた。コビーと一緒に転けてしまうと思ったけど、そんなことなくて地面に膝をついた瞬間引き上げられる。

「大丈夫ですか!すみません」
「えっ、」

心配してこちらを見たと思ったら膝裏に手をいれ抱えられる。咄嗟に、落ちないように彼の首に腕をまわすが一気に近くなった顔にどきどきしすぎて腕を離すところだった。
人気の少ない路地裏に入り角をどんどん曲がっていく。後ろからの海賊の声が小さくなった辺りで降ろされ、目の前の角を右に曲がって大きなゴミ箱の影に潜んだ。大きなゴミ箱っていってもしゃがまないと隠れられないし、二人で隠れると見えてしまう幅で、彼と隙間のないようにぴったりくっつく。私のおでこは彼の肩にくっつくぐらいで、走ったせいか、状況のせいか、心臓がばくばくが治まってくれない。

「……ヘルメッポさんを呼んだから大丈夫です。ここで大人しくしておきましょう」
「うん」

さっき転んだときも思ったが見た目の割にがっしりとしていて、背中にまわされた腕に男らしさを感じる。とか少し汗の混じったコビーの香りがする。とか何もすることがないと恥ずかしいところばかり目がいって一人で勝手に心拍数をあげている。コビーのこと考えないように目の前の状況を分析しないように別のことを考えていれば「もう、大丈夫そうですね」と背中を優しく叩かれた。

「ごめんね、足でまといで」
「いえ、そんなことないです!僕こそ走らせてしまってすみませんでした」
「……その、離してもらえると助かるな」
「あ、ごめんなさい」

海賊がいなくなっても海軍の誰かが来るまでは動かないのか、背中に腕を添えられコビーとの距離はこぶし三つ分ほどしかない。私が指摘したことで思い出したのか顔を真っ赤にしてパッと腕を離した。遠くからヘルメッポが呼ぶ声がする。立ち上がりズボンの汚れを叩く彼にそっと近づき「守ってくれてありがとう」とおでこの特徴的な傷にキスしてヘルメッポのほうへ逃げた。

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