悪いのは

酒場はものすごく盛り上がっていて、酔っ払いがうるさい。ベックやヤソップがいなかったらとっくに帰ってたぐらい。お頭は一番大きい席に座りそれを囲むように座っている古株。私はお頭の横に座らされ、そこそこに楽しむがお頭が鬱陶しい。酒飲むといつもこうだ。適当に話を流しながらベックとしゃべっていると肩を抱かれた。

「なぁ聞いてんのか」
「聞いてるよ」
「聞いてないだろ〜」

肩に頭をグリグリしてきて痛い。この酔っ払いめと思いながらも、今相手しておかないと後々もっと面倒になる。

「ごめん、何の話?」
「もういいその酒くれ」

私の持っているグラスを顎で指すから、はいと渡せば「ん、飲ませてくれ」 と口を開いた。

「えー」
「早く」

渋々、口まで持っていき傾けていると、飲みきれなかった酒が口の端に流れている。あっ、服に染みちゃうなと思った次の瞬間私はグラスを下ろし、お頭の首に舌を這わせていた。そのまま唇まで舐め上げる。最後に軽く唇の横にキスして顔をあげると顔が赤いお頭と目が合った。心做しか周りも静かだ。私も相当酔ってたらしい。今はお酒なんて一滴も飲んでないんじゃないかってぐらい思考は冷え切っていて、余計に恥ずかしかった。

「ご、ごめん風に当たってく、」
「おれが逃がすと思うか?」

視線を扉の向こうへ向け外へ出ていこうとすると腕を掴まれる。お酒のせいか彼の手は熱く、酔ってると思えないような力で止められる。そうなると酒場中の視線を集めるようになってしまって、焦って彼を引っ張った。

「シャンクスも暑いでしょ?外出よう」
「わかった、ベックここ頼んでいいか。」
「了解した。」

さっきまで引っ張っていたのは私だったのに今はぐいぐいと引っ張られている。まるでもう戻らないようなベックへの言葉、外でどこかに座るでもなく一直線に宿へ戻ろうとしていること、その二つで彼が今から何したいかわかって「これって私が悪い?」と心の中でベックに問いかけた。

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