彼の人たちの声

 星が瞬くのは、ご先祖様が見守って下さっているからじゃない。いつもより短い時間で火を点けられたのは、名もなき何かの機嫌がいいからじゃない。ルリ様の病気が治ったのは、祈りが天に届いたからじゃない。
 あなたは私のたくさんを否定した。だけど、特別悲しいと思わなかったのは、あなたこそが真実で、あなたの教えてくれるもの一つ一つが私のこれまでの人生を握り固めた一粒よりずっと輝いているから。
 要するに、私はなんにも理解出来なくても彼がもたらす科学に夢中なのだ。だから今日も、私は彼の時代に在った輝きの話をせがむ。

「……んーと、そのじんこうちのう…えーあいってのは、創始者様のレコードのたくさん版ってこと?」
「どうやったらんなぶっ飛んだ結論になんだよ…」
「……」
「あ゙ー…そこへ至る筋立てはあんだろ?」
「…えーあいの源はたくさんの人々の証を積み重ねて混ぜたものなんでしょ?それってつまり、命が尽きてもなお、その人たちが…ええと、何とかさんの声を借りて、知識を授けてくれるってことでしょ」
「……」
「レコードは創始者様本人の声だけど、去った人が、今いる私たちを導いてくれるってところは同じだなー…って」

 千空の赤い瞳が真ん丸になっていた。やがてくしゃりと細くなり。

「……クックク!違ぇ!全っ然違ぇ!」
「うぅ」
「が、そこまで100億%メルヘンに振り切られりゃ訂正する気も起きねえわ」
「どうせ私みたいな原始人の頭はお話になりませんよーだ!」
「違ぇよ」
「何がさ!?」
「俺だって俺なりにテメーの思考回路の紐解きを試みてんだよ。テメーが俺と科学を必死こいて受け入れたように」
「!……そんなこと考えてくれてたんだ」
「生憎それなりに血が通ってるもんでなあ」
「そうじゃない。……そう思わせてた?」
「真に受けんなバカ。……泣くこたねえだろ…」
「違うの…嬉しくて。私…皆程あなたの目に入っていないって思ってたから…」
「あ゙?捨てろ、んな誤解今すぐ。んで泣きやめ、とっとと」
「う、うん、ごめんね…」

 今、やっと分かった。特別悲しいと思わなかったのは、あなたが否定したたくさんの中に、私自身は含まれていなかったからでもあったんだ。






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