MEAN
「…キスしていい?」
「……」
優しく抱きしめてから、向かい合って指の背で頬をひと撫で。目の前の恋人は眉根と小さな口をきゅっと寄せ、小さく息をついてからまぶたを下ろした。
そろりとわずかに顎を上げる。眉間の皺が消えていく。僕が動くのをじっと待つこの姿がいじらしくて、思わず停止してしまった。
「………ちょっと。よくも辱めてくれたわね、嘘つき」
「ごめんごめん、見とれただけだよ」
「嘘つきは舌を切られるのよ。…ん?ってことはゲンは何回細切れに引きちぎられるのかしら…」
「君こそひどくない?こんな時に他の男の名前を出すなんて」
「…ごめんなさい」
「いいよ。想像でもゲンにそんな痛い思いさせないであげて。はい、仕切り直し」
次は瞳を開けたまま、じいいと見上げてくる。あぁもう、それも可愛いな。
君はつい強気に出てしまう自分を今ひとつ好きになれないみたいだけど、僕から見ればただの個性だし、振り幅に動揺してしまうっていう、君の僕に対する主張とお互い様なんだよ。だから僕も僕を否定しないことにしたし、君がどれだけいい顔しなくたって、構わずたくさん好きって言ってあげたい。
「……意地悪しない?」
「されてるのは僕なんだけどな…」
多少脱力して、その後気を取り直して近づき額をくっつける。
「…開けたままする?僕は構わないよ?」
「っ」
ぎゅ、とあんまり分かりやすく急いで目をつぶるから、また胸が甘く締めつけられた。
ごめんね、やっぱり少しの意地悪は許してほしいな。
無防備な額に口づけを一つ。怒りを表に出す前に後頭部を固定して、あとはもう僕の思うままにさせてもらった。
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