NO!

「ね、ね、チューしていい?」
「……やだ」

 あらら。でもね、俺はめげないよ。メンタリスト、ではなく恋人の腕の見せ所ってね。
 照れ隠しで拒む子じゃないから(俺の教育の賜物だけど)、ジーマーで気分が乗ってないってこと。ただ、間があったから触れ合い自体は嫌じゃない。さあて、何なら許してくれて、どうしたら乗ってくれるかな。

「じゃあ手繋いでいい?」
「……」
「反対も〜」
「……」
「次はさすさすしたいな〜」
「楽しい?」
「え、うん」

 ガチトーンで答えたら眉毛がちょっと動いて呆れ顔。付き合ってくれるって意味だ。

「腕を〜さすさす」
「……」
「肘を通って〜二の腕」
「……」
「か〜たっ♪」
「……」
「まだいーい?」
「んん…」
「んじゃ、今度は俺のことさすさすして?」
「……どこを?」

 そこで俺は一気に距離を詰め、華奢な身体をめいっぱい抱きしめた。

「!?」
「せーなか!」
「…動けない…」
「おっと、メンゴ。……あー、ポカポカするねえ」

 こくりと振動が伝わって、小さな手が俺の背を撫で下ろす。俺も同じように、でも最大まで範囲を広げて。
 いつしか彼女の動きは鈍くなって、俺を受け止めることに集中し始めるこの瞬間がたまらなく好きだ。

「はぁ可愛い…頭も撫でちゃお」
「んっ」
「ね……キスしよ…?」
「やだ…」
「んえっ!?」
「……後で…」
「っ……ハァ〜〜〜…喜んで…」

 あーああ、"浅霧幻"の連敗記録は今日も無事更新されましたよっと…。






- ナノ -