Mine

「カインさぁん…これ、変じゃないですか…?」
「変な訳ないだろう。似合っている」
「えぇ…それもどうかな…」
「お前…選んだ本人の前でよくもそんなことが言えるな…」
「だって…ちょっ」

 ぬっと伸びたカインさんの左手が私の胸を鷲掴む。薄い布地は彼の熱をダイレクトに伝え、両肩が強張った。
 ベッドの上で向かい合う私たち。カインさんは真っ白のバスローブ姿で、私は…これはネグリジェ、あるいはひざ丈のランジェリードレスとでも呼べばいいだろうか。光沢のあるシルク生地で、なんと正面の一部がレース素材になっていて、おへそもパンツも太ももも透け放題という訳だ。あと、大きく開いた背中で交差するデザインの肩紐もエロい。着ている私はちんちくりんだけど。
 むにむにと胸を揉まれ、まだ濡れた空気でもないのに気分が完成しそうになってくる。先に湯浴みを済ませ、半ば自室と化した客室のベッドにこれが横たわっていたのを見つけた時から、こっちはもうずっとドキドキしっぱなしなのだ。思わずカインさんの手に自分のそれを重ねると、フッと笑う声が聞こえてきた。

「ん…こんな破廉恥な服が似合うって…言われるのも…ねぇ…」
「言いたいことは分かるが…まぁいい、気に入ったから着たんだろう?」
「……はい、やっぱりセンスいいですよね、カインさん…」
「それほどでも」
「っふぁ」

 彼がさらに距離を詰め、空いた方にも大きな手を宛がった。
 経験がない程の肌触りの良い生地、これに袖を…いや袖は無いんだけど…通した時の気分や今の気持ちを見透かされている恥ずかしさ、カインさんの太い首と浮き出た喉仏。そういうものが私を急かす。後ろめたさがせり上がってきて、口元を覆ってしまう。
 すると、私に押さえられていない側の指が蠢き、頂をぎゅっとつまんだ。

「っ!」

 すりすりと三本を使って形を暴かれ、あっという間に布地に影が出来る。まだ何もされていないはずの下半身がきゅうと収縮するのが分かる。両胸とも頂を指で挟まれながら揉みしだかれて、気持ちよさと上手く言い表せない不安に同時に襲われてしまう。

「っ、カインさんっ…キス、キスして…」

 たまらず強請れば、向こうもそのつもりだったのかすぐに叶えられた。彼の頬を探し当て、体温を感じようと大きく包み、耽っていく。

「んっ、ん…んんっ…!」

 迫る舌を招き入れ、腕を伸ばし広い肩を必死に抱きしめる。
 くちゅくちゅと響く水音が私の感覚を研ぎ澄ませ、その合間に先端から生まれた痺れが全身を巡っていく。切なくてたまらない。カインさんの温もりがもっと欲しい…。

「ん、はぁっ…」
「っ…」

 炎を秘めた瞳で射抜かれる。色っぽく下がった眉。中央の皺がさらに増え、赤い舌がわずかに出て、自身の唇をちろりと舐めた。"来い"、そういった合図。
 再び頬に触れ、角度をつけて食らいついた。カインさんは主導権をある程度渡し、腕を引っ込める。衣擦れの音。バスローブの結び目を解くのが視界の隅に一瞬映った。

「エルダ」

 息継ぎの合間に名を呼ばれ、少しだけ見つめ合う。瞼を下ろせば再び熱。そして抱き寄せられ、素肌となった彼に身を委ねていく。

「…カイン、さん…」
「ん?」
「直接…触れたいです…」
「…このままは嫌か?可愛いんだが」
「あ」

 耳をかじられ、背を撫でられ、ぞくぞくと悪寒が走る。だけど同時にもどかしさも感じてしまう。

「ん、着ててもいいけど…服越しはやです…」
「あぁ、悪い」

 するり。裾を捲り上げ、カインさんの両手が内側へ侵入する。一度ぴったりと抱きしめてもらってから、私はシーツの上に倒された。
 今度は前面を開き、彼はおへそ周りにキスを落とし、腰のラインを撫で下ろし、その動作の続きで下着に手をかける。丁寧にそれを脱がせ私を見下ろす彼は少し笑っている。つられてしまった。

「何ですかぁ?」
「本当に可愛いな、と」
「そりゃ、あなたが選んでくれたんですもの」
「違いない」
「ふふ…ありがとうございます」

 くすくすと啄むキスを繰り返し、頃合いを見てカインさんは私の秘部に手をやった。自分の体だ。すでに濡れていることぐらいは知っている。彼もそれを確認し、やや大胆に触れていった。

「あ…」
「入れるぞ」
「んぅ…あぁ…」

 それでも念入りに解され、腰が浮き上がってしまう。次へ進む前に私も少し…と思っていたけれど、気が付けばカインさんは私の足の間に位置取り、ひざ裏に手をかけようとしているではないか。と言ってる間に早速広げられてしまった。

「ひあっ…」
「…いいだろう?」
「ふぁい…」

 私の愛液を纏おうと、彼が腰を前後させる。熱い秘部同士を擦り合わせられて、期待でまたナカがきゅんと疼いてしまう。いつなの、とひくつくそこをしばらく焦らし、私が見上げて訴える頃、ようやく動いた。
 押し広げられ、重い熱が奥まで届き、私はシーツを握りしめる。彼の速度が一定になれば、とたんに取って代わる快感。

「あっ、あ、あ……っ、カイン、さんっ…」
「ん、エルダ…」

 カインさんの顔が下りてくる。繋がったままキスをもらって、頭の中もお腹の中も幸せでいっぱいになる。ぐしゃぐしゃと彼の髪をかき乱し頭を抱え込めば、びくりと反応が返ってくる。それで私もまた彼を締めつける。

「ぷは、っん、あっあ…カイン、さん…きもちいい…」
「っく…はぁ……どこがだ…?」
「あ、奥……おく、好き…あ、あ…」
「そうか…んっ」

 ぐ、と打ちつけられて背がしなる。自由になった両脚を閉じ、より彼を感じようと力を込めた。だけど、何故か抽送は緩まっていってしまう。

「エルダ、うつ伏せになれるか…?」
「ん…は、はい…」

 意味を理解し、助けも借りながら体を反転させる。ほんの少しだけお尻を持ち上げられ、私は再び彼を受け入れた。新しい体勢になり、もう一度壁を広げられて、ぞわりと全身に鳥肌が立つ。
 それだけでは終わらなかった。

「っあ…!?」

 カインさんを知らない場所へ、熱が到達していた。縮こまるナカが、それがどれだけの驚きであったかを二人に知らせる。視界が一瞬爆ぜた。

「あっ、あっ、あ……っ、っ、んんんっ!」
「は……はっ…!」
「あっ、これっ、んあっ、んっ…!」

 お腹がベッドに縫い付けられているせいで、逃げ場がどこにもなくて、一突き一突きを全部受け止めることになって。
 あまりの衝撃。だけど、枕をきつく抱きしめても、悲鳴に近い嬌声を上げても、彼は容赦してくれない。ごつごつと深い所をより大きくなったもので穿つ。ぶんぶんと首を振れば、頭を撫でられなだめられる。

「カイン、さんっ、あっ、カインさんっ…!」
「はぁっ……教えて、くれ、エルダ…!」
「ああぁ、ああ、すご、い、のっ……あっ、あん、んっ、きもちい…きもちいい…!」
「あぁ…俺も、だ…!」
「っ、あっ、あ、好き、カインさん、好きっ、大好き…!」
「くっ……エルダ…!」
「あっあっ!そこっ、あっ、あああぁ…!」

 枕にしがみつき、目の前が、意識が真っ白になっていく。

「っ、っ…カイン、さんっ……あ、っ、っ、イ、く……!!」

 全部が弾け飛んで、私は盛大に昇りつめていた。がくがくと全身が震え、制御の利かない涙がぼろぼろと落ちる。不規則にうねる胎内。背後のカインさんが息を詰めるのが伝わってくる。

「…あっ……あ……」
「…エルダ…」

 愛しげに名を呼ばれ、また反応する私。カインさんが前へ屈む。ぐり、と熟れ切った肉を抉られて、力が出ないはずなのに大きく跳ねた。

「俺も……」
「っ…」

 耳元まで迫っていた彼がぼそりと呟き、変に意識が覚醒した。こくこくとうなずいて、でももう何も出来なくて、ただ声を上げるしかなくて。
 さっきよりも被さるような形になって、カインさんの重みと温もりを感じながら、私は強すぎる刺激に耐えまた喘ぐ。

「う、く…あ……あ…」
「んんっ、んっ、あ、あぁ…!」
「エルダ……好き、だ…っ!」
「!あ、っん…カイン、さん…!」
「っ、ぐ、う……出す、ぞ…!」

 もう一度こくこくと返事する。程なくカインさんが動きを止めた。流れ込んでくる新たな熱。胸の奥がぎゅうっと締まって、苦しささえ感じてしまう。でも、間違いなく幸せだ。
 あらゆるものから解放されたカインさんが、長い長いため息をついてから抱きついてきた。残念ながらわずかに身悶えするぐらいしか出来なかったけど、それでも彼は嬉しそうに背に吸いついた。

「ふぁ……おも、い…」
「すまん…もう少し…」
「んー…はい…」

 投げ出された手を握られて、愛しさで胸が満たされていく。
 あぁ…カインさん…このままずっと、ずうっと…こうして私だけのカインさんでいて下さいね…。






- ナノ -