「よぉ」

突然の来客に扉を開けた正臣は、その姿勢のままで固まった。

「………コスプレですか?」

「んな趣味ねぇよ、馬鹿。」

いや、説得力ないですから。心の中で突っ込んだ正臣の視線は静雄の頭上に固定されている。鮮やかな金髪の中からひょこりと生えるソレは、

「…ネコ耳?」

「違う、トラだ」

「いや、でも…」

「トラだ」

見ろ、牙あんだろ、と静雄は歯を見せる。そこには確かに常には無い鋭い牙があった。しかし正臣からしてみればネコだろうがトラだろうがどうでもいい。頭上でひくひく動くネコ、もといトラ耳は昨日の静雄には無かったものだ。

「本物…なんですよね?」

「あぁ」

「どうしたんですかソレ?」

「知らねぇよ。朝起きたら生えてた」

「えぇと、何か心当たりとかは…」

「全くねぇ。だけどこういう面倒臭ぇ事はノミ蟲の仕業だって相場が決まってんだろ」

断言する静雄に正臣は首を傾げた。いくらあの迷惑製造機でも人体に異形の耳を生やすなどという所業が可能なのだろうか。疑問ではあるが考えたところで分かるはずもなく、正臣は早々に追求を諦めた。濡れ衣で臨也が殴られたところで正臣にとっては朗報でしかない。そうですね違いないですと適当に頷く。

「でもまさか静雄さんに先を越されるとは…」

「なんの話だ?」

「ケモノ耳の話です。あ、よく見りゃ尻尾まである!触ってもいいですか!?」

「あぁ、いいぞ」

ゆらり、と太い尻尾が持ち上げられた。正臣はそれを手に取り撫で上げる。思っていたより毛は硬い。しかし手触りは滑らかで心地よく、正臣は思う存分にその感触を楽しんだ。
そしてはたと気付く。

「そういえば静雄さん、なんで俺のとこ来たんですか?残念ながら俺、治療薬を開発できるようなスーパーでミラクルな頭脳は持ち合わせてないんですけど」

「んなモン期待してねぇよ」

「じゃあ…あ、臨也さんの現在地も知りませんよ?なんなら捜すの付き合いますけど」

「や、それもいらねぇ」

首を振る静雄に正臣の頭に疑問符が浮かぶ。まさか今のビックリ人間状態を見せにきたのだろうか。

(あ、俺可愛いとか言ってないけどもしかして傷ついちゃったりしてんのかなぁいやあんだけトラを主張してたんだから可愛いじゃなくてカッコいいって褒めたほうが、)

「俺さ、発情期みたいなんだわ」

「へ?」

考えを巡らせていた正臣は、静雄の言葉が聞き取れなかった。きょとんとする正臣に静雄はもう一度伝える。

「発情期なんだわ。だから手前んトコ来たんだよ」

「…へ?」

今度は聞き取れなかったわけではない。よくよく見れば静雄の顔はうっすら上気していた。しかしそれでもどうか聞き間違いであってくれと願う正臣に、静雄は悠然と微笑む。

「責任取れよ?散々触ったんだからよぉ…」

正臣の手の中で尻尾が揺らめく。
ダラダラと冷や汗を流す正臣は、果たして彼は一体何処まで虎になったのだろうかと恐怖した。






彼は


(これがホントの肉食系男子ってヤツか)







トラにこだわったのは題名のためです。









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