非日常
『早くねーっ』
そういって、クリスティナからの通信は切れた。
まぁ要は、あと10分でロビーに集合ということなのだが。
普段なら問題のない時間だ。
元々最低限ぎりぎりをわずかに下回る程度にしか身なりに気を使わない八知だ、必要とあらばすぐにでも出られる。
ただ、そうするとクリスティナにあれこれと指南を受けることとなる。
この間には、見た目の関心の薄さは同レベルだと思っていたフェルトにさえ、忠告を受けた。
まあそれは、八知が女の子という前に、人としてどうかという程のひどい有様だったからだが。
ぼさぼさの髪をかきあげ、それをどうにかまとめあげようとしながら、八知は苦戦していた。
無重力化ではかろうじて見られるくらいにはどうにか出来たものを、今では酷くなるばかり。
仕事の面では器用なはずの彼女も、自分の髪の扱いとなると途端に不調法になるのだった。
「あぁ〜っ、もうっ、言うこと聞かないなら切るわよ!」
煩わしいと、ただでさえ長くはない髪を、いらだたしげに引っつかむ八知。
これで扱いきれないと言うなら、もはや刈るしかなさそうなものだ。
「あと三分じゃない!もう!」
もはやこれまで、とためらいもなくハサミを手に取った八知を制するかのように、タイミングよく部屋の扉が叩かれた。
「開いてるわー、どなた?」
振り返りもせず、声を上げた八知。
間を置いて開かれた扉から入ってきたのは、ティエリアだった。
「……あなたが集合に手間取るのは珍しいとは思ったが。一体何をしているんですか」
呆れたような声。
部屋を訪れた彼を気にする様子もなく、八知は思うようにならない自分の髪を憤慨したように引っ張ってみせた。
「どうにもなってくれないのよ、これが。だからもう短くしようと思って」
「まったくあなたという人は…」
肩を落としたティエリアが、八知の隣までやってきて、八知と同じように壁の鏡を見る。
「今まで身だしなみを乱してたんですか?」
「…ティエリア、その親父ギャグ上手くないわよ」
「…ギャグを言ったつもりはありません」
少し声の低くなったティエリアに笑いをとばせば、頭をぐい、と前に向けられた。
「な、何?」
「前を向いていて下さい、なにぶん時間がないものですから」
わざと嫌味な口調でそう言って、ティエリアは八知がそれまで手にしようともしなかったブラシを手に取り、手早く絡まった髪を梳いていく。
こんがらがった髪なのに、下手に引っ掛けることもなく、八知が痛い思いをすることは一度もなかった。
「いやぁ〜、助かるわーティエリア。さすがね、いつ見てもティエリアの髪はさらさらだもんねー。使ってるシャンプーを教えてほしいもんだわ」
「支給品ですから、あなたと同じはずですが」
ブラシを置き、どうせ髪を乾かさずに寝たのであろう、取れそうもない頑固な寝癖をごまかすため、後ろで一つくくりにする。
ティエリアの、ソレスタルビーイングいちの巨体を誇るヴァーチェを扱っているとはとても思えない繊細な指が、髪の隙間を縫って頭皮を滑っていく。
とても心地よくて、猫にでもなったような気分だった。
もっとも彼が猫を撫でるかどうかは、また別問題だが。
「じゃあ行きますよ」
「あ、はーい…」
「何をやってるんですか、あなたも行くんでしょう」
素晴らしい早業で髪を結い終え、扉に向かいかけたティエリアをぼんやり見送った八知は、片眉を上げ、怪訝な顔で振り返ったティエリアにたしなめられる。
ああ、そうだった、集合なんだった。
時計を見ればまだ、急げば遅刻はしない時間。
さすがは完璧主義、ティエリア。
彼の後を追って部屋を出ぎわ、最後に後れ毛を整えるために自分の首筋に触れたティエリアの指先に、やけに鼓動を速められた自分に思わずも口に手を当てた。
。.。.。.。.。.。.。
日記を見て下さった方なら爆笑してご理解したかと思いますが、書いたこともないティエリア(ガンダム)夢を管理人に書かせたのは、言わずもがな例のEDのせいです。
勢いって怖い………
夢ではよく、ツンデレどころかツンツンに書かれがちなティエリア、あのEDで料理なぞをしている姿を見て、緩やか穏やかなティエリアが見たくなったんです。
見事に撃沈しましたが。orz
ちなみに最初は、敬語ではありませんでした。
大人な雰囲気に一役買いはしないかと、ヒロイン上司キャラにしたんですが、スメラギさんくさくなっただけでした……
ティエリアは書けないというより、ネタが思いつかねぇ!(逆ギレか
ところでガンダム感想文を書くのに、文字数足りないためだけに日記帳変えた管理人です。←
08.1.12
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