見た目だけの嫌いを





「離して下さい」

「?なぜ」

「動けません」

「それがどうした」

「ベタベタしないで」

「他に誰もいないのに、何を遠慮しろと?」

「私が嫌なんです」

「何を今更」



ふっ、とティエリアが鼻で笑った。

ツンとそっぽを向く彼女は、さも忙しいと言わんばかりにせかせかと手を動かしているが、付き合いだして日が浅い訳でもなし、拒まれる理由だって見当が付かない。


それでもティエリアには、彼女に嫌われていないという自信があったし、例えどうであろうと引き下がる気はさらさらなかった。



「こちらを向け」

「嫌」

「何を強情になっている?」

「別に。私がいつでもヘラヘラ尻尾振って構ってもらうと思ったら大間違いなんだから」

「ふうん、そうか」



するり、と背中から彼女の腹に回した腕を解くと、ピクンと彼女の肩が揺れた。

彼女が向かい合っている食器棚のガラスを見れば、俯き加減に名残惜しそうな彼女の顔がはっきり映っていて、ティエリアは口角を引き上げた。



「では、当分僕はここに帰らない方がいいな」

「なっ、誰もそこまで…!」



大いに焦った彼女が振り返るまで後一秒。


そんな彼女の唇を奪うまで、あと二秒。











見た目だけの嫌いを











「で、どういうつもりであんな真似を?」

「……男は付き合いだすと、安心して気が緩むって。雑誌に書いてあって」

「……で?」

「……………マンネリ対策でした」

「はぁ(可愛いような、ただの阿呆のような)」













。.。.。.。.。.。.。.。.。


なにこの話(聞くな

さすが作成所要時間7分。


090305


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