自暴自棄な認知





「違…う」

「そうだって」

「違う…っ」

「いやいや、絶対そうだから」



違うっ、とまだ強情を張る少年は、ぷるるっと精一杯首をふる。

うん、可愛いからね。
目回してふらっふらになってるじゃないのさ。



「休みなさいよ」

「僕は、なんともない…!」

「嘘こけ」

「なんともないっ!」



必死で見上げてくる赤い双眸は濡れている。
同じく赤く熟れたような唇の間からは熱い息がもれているし、普段青白い肌は桃に染まっている。


この有様にありながら、よくなんでもないなんて言えたものだ。

どうあっても体調不良を認めたくないらしい少年は、私から眼鏡を取り返そうと必死に腕を伸ばす。

女みたいな細くしなやかな腕は、しかし目測が誤っているのか、的確に私を捕らえる事が出来ないで、落ちてった。


そんなつぶらな瞳で見つめられても、私はなんにも悪くはない。



「しんどいって言ってみなよ」

「嫌」



嫌って………子供か。



「じゃあなんで顔がそんなに赤いのかな?ティエリアくん。ああ、反抗期?」

「ちがっ…!」



否定の途中で咳込んでやがる。

どうしようもねぇなとため息をつけば、またそれが気に入らないらしい少年は睨んでくる。

だから目が潤んでるから。迫力ないから。



「君ねぇ、何言ったって、そんな状態じゃどうにもならないじゃないの。お姉さんが看病してあげるってんだから寝なさいよ、大人しく」

「ぼくは病気になんかっ、掛からない…ぃ…」

「(やべぇ萌えた)ああそうだティエリア、今の君の症状にぴったり一致する病気があるんだけど、それは薬も手術も意味ないし、寝てたって良くならないんだ。もしその病気なら、君をベッドに突っ込んだって無意味な訳だけど…」



チラッと横目で見れば、窺うようにしてティエリアが視線をこちらに向けていた。

もしその病気だと認めてしまえば、病人というレッテルを貼られはするが、自由にはなる訳だ。


熱に浮かされて、いつもより何倍も回りが悪くなった頭で天秤に掛けるティエリアの、揺れ動く心中が容易に察せて、思わず緩みそうな口元をどうにか押しとどめた。



「それ、なのかも………」



慎重に返されたティエリアの言葉に、もう少しで吹きそうになったのを無理矢理押し込めた。



「思考は鈍くてクラクラして、熱があって顔が赤くて涙が出そうになるし、胸はドキドキして呼吸が上がっていくら吸っても息が足りない?」

「……………」

「症状が合わないなら違うのかなぁ」

「…………そ、う」

「うん?」

「症状、合ってる」



ちょっとやけくそみたいな認知に、もはや口角が上がるのを止められなかった。



「そっか………それって、恋の病、なんだけどね」

「!!」



ボンッ、と一気に紅潮したティエリアの頬っぺたに、更に畳み掛けた。



「ねぇティエリア、風邪と恋、どっちだろうね?」






自暴自棄な認知






「ふ、っ………う………」

「さぁさぁ、観念したならさっさとお休み」

「………も、」

「うん?」

「風邪も恋、も、どっちも、だ……!」

「!!」

















。.。.。.。.。.。.。.

受なティエリアが書きたかっただけ(万死

ただの偽者\(^O^)/



090113


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