取引材料=素直
「近い」
「それが?」
「離れて」
「なぜ」
「人に必要以上に近付かれるのは好きじゃないの。知ってるでしょ」
「用件はある。君が答えればいいだけだ」
「近付かれるのは嫌い。あなたでもイヤ。だからあなたが嫌い」
「聞き飽きたな。その公式」
「私も言い飽きた」
「そろそろ止めてもらおうか」
その返答、と言って、ティエリアは両手を壁に付いて、そのわずかな隙間に追い込んだ私に、首を伸ばして更に顔を近付けた。
もうほとんど間がない。
だけど触れているのは、彼の微かなぬくもりを含んだ吐息だけ。
あっ、訂正。今髪が触れた。
この無駄に美人なコイツの、サッラサラの紫の糸みたいな髪が頬を掠めた。くすぐったい。
そもそも、その公式は証明されているのか?なんて、訳の分からない事をいいはじめる、目の前の綺麗な顔した悪魔。
「お前が答えればこの状況から解放されるぞ」
イエスか、ノーか。
「イエスなら、」
この3cmしかない隙間を埋めてやろう。
どうする?と、紫の悪魔は笑った。
取引材料=素直
本音なんてとうにお見通し
。.。.。.。.。.。.
お題に手を出した馬鹿がいます。
年末のこのクソ忙しい時期に。
阿呆だ。
081201
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