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春から使い続けたスケジュール帳の、今年最後の月ページを開く。この月も、あと三分のニで終わる。

簡単な日記がわりにちまちま書き込まれた手帳に、年末年始までの予定は主に六つ。

まずは我らが冬ちゃんの誕生日。
そして私の終業式。
週末を挟んで冬ちゃんの終業式があって
クリスマスを楽しんで、
のんびり年を越したら、
近所の神社に初詣に行って
そのまま親戚のおうちにお節をご馳走になりにいく。



「かんっぺきです」



キュッとペンの蓋をしめて、手帳をテーブルに置いた。

特に、マンダリンオレンジのペンでぐるぐるに囲った二十日は外せない。

誕生日プレゼントは、ずいぶん前に買ってあったりするのだが。
でも、今になってそれでいいのか悩んでいたりする。というのも、すべては先日の葛畑先生の一件に端を発するもので。

ちょっとこれは、あげていいものかどうなのか…と頭をひねるも、答えも代替すらも見つからないまま、気がづけば誕生日はもうあと5日後に迫っていたわけだ。




RRRRRR....



「はいはい…どちらさまー、っと」



電話を取る前から機械に応答する私を、今は隣の居間にいる冬獅郎くんが、いつもと同じく不思議そうに見ていた。

これはもう、民族性からして仕方がないと思う。

休日の朝から鳴り響いた電話を、コール四回目で捕まえた。



『あぁもしもし、眞知子ちゃん!?』

「えーっと、泰代おばさん?」

『あら、祐ちゃんだったわ。ごめんねぇ、そうよねぇ、眞知子さんはいない方が多いわよねぇ』



アハハハハと、元気のいい笑い声を響かせるのは、父方の伯母だった。
最後に会ったのは、スイカをお裾分けに貰いに行った夏休みの始めか。
頑張れば自転車で行ける距離に住む伯母一家は、一番近しい親類縁者である。

年末年始、親の不在率が高いこの家では、そのたびに伯母の家にお世話になるのが恒例になっているが、その話だろうか。
と思ったが、どうやら違ったらしい。



『祐ちゃん、終業式はいつ?』

「20日ですよ」

『あらぁ、そうなの! 実はねぇ〜、うちの千尋也いるでしょう?』

「あぁ、ちずやくん。相変わらず腕白ですか?」

「うふー、祐に掛かれば、獅子も子猫よ」



なんとなく含みのあるそのセリフに、私も勘付いてしまった。
さっきまで見ていたスケジュール帳が、なんとはなしに頭に浮かぶ。



「実はねぇ、その千尋也なんだけど、ちょっとの間、そっちで預かってほしいのよねぇ」



おほほ、とお上品な笑い声が、機械音に加工されて流れてきた。















提示された期間は一週間。
短いような、長いような。

苦笑しながら、押入れの奥のお客様用布団を引っ張りだす。
うーん、やっぱりちょっと湿気てるかな?

振り返ったら冬獅郎くんの翡翠がこちらを向いていて、布団を抱えたまま、はたと気付く。



「あぁそうだ冬ちゃん。冬ちゃんに弟ができるよ」



私はなにも考えずに、面白半分でそう言ったのだ。

しかしそれに対して冬獅郎くんが、いつも以上の真顔で、貫くようにこちらを見つめ、口を開いた。
その薄い唇を、すっと開いたのだ。



「また、引き取るのか?」



あの時より、ずいぶんかすれた声だった。
でも感情によるそれではなく、単に声がうまく出なかったとか、そういった感じだ。おかげで、相手が小学五年生ということを忘れるほど大人っぽい。

そりゃそうだ、ずっと喋らないで、少なくとも私が声を聞いたのも、葛畑先生に家に送ってもらった時以来だもの。
喉がうまく働かなかったって当たり前だ。


頭のどこかが、いやに冷静に、そんなことを考えていた。



でも実際の私の体の方は、ポカンとアホ顔をさらして、押入れから布団を抱え出したそのままの姿勢で固まっていた。
そのことに私より先に冬獅郎くんが気付いたようで、硬い表情で顔を教科書に戻した。

しーん、とほんの少しの間、沈黙が空気を支配した。


「いやいやいや、違うの冬獅郎くん! 父方の親戚の子がね、一週間くらいうちに泊まりにくるの、小学二年生なんだけどこれがまた小生意気なぼっちゃんで、冬ちゃん面倒みてあげてね、っていう意味だったっていうか、私の弟にはもう冬獅郎くんがいれば十分よ!」


あれ、なんか恋人に言い訳してるみたい。というのは、口走りながら思いはしたが、案の定、冬獅郎くんも居心地悪そうに視線をそらした。

しーん。先ほどとは毛色の違う沈黙が、また空気を埋める。



「あのー、とりあえず、明々後日の夕方に来ますので…」



よろしくお願いします?

とよく意味も分からずに頭を下げてみたが、立ち位置的に冬獅郎くんの白髪が微妙な動きで揺れたのしか分からなかった。















--------アトガキ-------

取り合えず、序章ということで^^
短めでサーセン!!続きは出来るだけ早いうちに上げたいと思います。

これから千尋也くん来襲編が始まるよ!という予告みたいなもんです。
久々に更新しといて、一話分話数稼ぐような書き方しやがって!な書き方で実に申し訳ない。

〜の手にかかれば獅子も子猫、は某ゲームの某ちっこい大魔術師さんが、某イケメソ戦士との戦闘開始のセリフ、ということに後から気づきました。
分かる人だけ分かりますね(笑)
まぁググったらバンバン出てくるとは思いますが。


ちなみに千尋也という名前を地味に気に入ってたりする管理人。ものの数秒で思いついたインスタントネームながら、最近の子供の名前のノリってこんな感じじゃない?とうまく名付けられた気分に(だけ)なってます。

ちなみに管理人の世代は、マサキくんとかヨウスケくんとかそんな感じの名前が多かったですねー。結構名前の雰囲気で世代ってばれますよね。
ギリで、○子ちゃんとか○太郎くんとかもいました。○男とかはいなかったと思いますが。○美は多かったですけどねー。とくに北海道の学校に引っ越したら。
本州の学校じゃあんまりいなかったな。地域的な名前の流行とかもありそうですね。
管理人自体は公言してますように珍妙な名前なので、名前だけだと完全に世代も何もない感じですが^^
あえていうなら、平安時代です、平安。この名前のノリはなかなか現代では出会わねぇ。


相変わらず、録画した日5アヌメは録画だけしてたまりまくってます。青エクまだ一回も見てない^q^
フラ○タルもジャイア○トキリ○グも一回も見てないよ\(^o^)/
rkrnだけガン見してます。16期とかも漁るようにして見てます。七松先輩って実は男前だよね!異論は認めない。


ひとまず、小説よりアトガキが長くなる前に切り上げます。

110721



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