058
「あのー、冬獅郎さん?」
リビングと廊下の境で、先程から突っ立ったまま動きがとれない。
原因はこの、白い小動物なのだが、見たことのない行動パターンだけに、対処法が見いだせない。
はてさて、一体この美少年はまた、何を思い悩んでいるのだろうか。
今日のことで何かしら、この少年の態度に変化が出るであろうことは予想していたものの、その予想とは全く真逆の化学反応が起きたために、化学式がチンプンカンプンだ。
少年は私の服の裾とジーンズを一緒くたに鷲掴みにして、そのまま床を見つめている。
この時ばかりは有り難くない身長差で、表情は伺えない。
いつものように、くしゃくしゃに抱きしめて顔をのぞき込めないのは、私の方が葛畑さんの事で色々ショックを受けているからか。
しっかりしなければと思うのに、いちいち自分がする事に責任や自信が持てなくて、冬獅郎くんに伸ばした手を引っ込めてしまう。
ああもう、最低だ。
今更、そんな風に怖じ気づくのは、今までがとんでもなく無責任だったということの証のようなものじゃないか。
自分を叱咤して、冬獅郎くんのふわふわな髪を両手で包んだ。
その時。
「…………」
「えっ」
聞いたことのないような声が、己の喉から飛び出た。
耳を疑った。
少しの沈黙が流れたと思う間もなく、握られていた衣服がそのまま、おもいがけない強さで下に引かれ、なし崩しに片膝を床についた。
冬獅郎くんの名前を呼ぼうとして、目の前に翡翠の瞳があることに気づいて喉が詰まった。
「あいつに、近寄るな」
不思議な位に、はっきりとした低めの子供の声音が、廊下に響いた。
一切音のない空間で、その声だけが存在するかのように、綺麗に空気の中を通っていった。
今までは、正反対だったはずだ。
そんな声とは裏腹に、ぎこちなく服を握り込んでいた手を離すと、彼は力が抜けたように腕を下ろし、一歩後ずさった。
ああ、もう最低だ。
かける言葉も見つからない。
傷ついた冬獅郎くんの瞳を確かに見つけて、自分の顔を彼の胸に押し付けるようにして抱きついた。
今度は私の方が言葉を無くしたみたいだ。
何がどうなっているのか、冬獅郎くんの言葉の真意も、汲み取ることも出来ない。
頭も顔もぐちゃぐちゃになりながら、ただ冬獅郎くんを抱きしめていた。
けれど、それから冬獅郎くんの手は、私を捉えようとはしなかった。
------アトガキ------
………勢いがね。大事っていうかね。
ちくしょう、予定は未定だよバカやろー。そもそも葛畑センセーが勝手に先走ってくれちゃったからシロはともかくヒロインが病んじゃったんじゃんかバカあ。
久しぶりに日番谷連載をこんなに書いてる気がする。
だって早くほのぼの微甘書きたいんだもん(゜Д゜)
ネタ帳を忘れてきた時から、フラグは立ってたんだよ。予定なんかもう完全に潰れたよ。
さっ、開き直って次逝ってみよー(´¬`)
100117
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