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それから三十分が経って、結局デザートまで家族三人で食べ終えてしまった。
もちろん冬獅郎くんの分は残してあるが、本人は帰ってこない。


一緒に食べられるようにとゆっくり食べていたのだが、もうすぐ午後の部も始まってしまう。


集合がかけられるまで、あと十五分だった。




「手洗ってくる」



ハンカチだけ持って立ち上がり、文句を垂れ流しながらも食べるだけ食べた母と、カメラチェックに余念のない父を置いて、レジャーシートを離れた。


すでにどの家族も昼食は終わっていて、家族交流みたいなものが起こっている。
子供は子供だけで遊んでいるし。



冬獅郎くんの姿を目で探しながら歩いていくが、あの白髪は見当たらなかった。

代わりに大塚先生を見かけたが、放送部のテントで忙しそう何やら指示を出して、てんてこ舞いになっている様子だった。
競技の準備は終わったのだろうか?



校舎の入口近くと、体育館入ってすぐのトイレは人で溢れかえっていた。
それに並ぶ気もしないので、トイレが目的ではない私は、進路をかえて校舎の裏手の手洗い場に向かった。


第二グランドと呼ばれている、少し高台にある敷地の手洗い場がある。

グランドはせいぜいドッジボールが出来る程の広さしかないのだが、そこに設置された手洗い場は、その存在を知る先生や生徒もその道程を面倒がって行かない。


まあ私も在学中は、もっぱら他が混んでいる時位しか使わなかったのだが、急いでいる時や待ち時間が長そうな時には役立つものだ。



どこにでもある学校の七不思議、そのうち三つが固まる校舎裏の暗いそこには、表の喧騒に比べてまったくと言っていいほど人の気配を感じさせなかった。


が、人がいないわけではなかった


子供の声が聞こえている。

学校の生徒は、覚えきれないほど生み出された校内限定のジンクスに基づいてあまりここには来たがらないのに、と思えば、古い樹の影から見えたのは黒やオレンジのTシャツだった。


ほとんどが他校の小学生のようだが、中には中学生も二人混じっているようで。

なんだかよろしくない雰囲気だと思うのと、体の大きな中学生に胸倉掴まれたマイ弟を見咎めるのとはほぼ同時だった。




「君たち何してるの!」




フラッシュバックしたのは、ショッピングモールの駐車場での出来事。



あの時のように冬獅郎くんは応戦している様子はなかったが、明らかにこれは喧嘩のムード。

容姿のせいなのか、冬獅郎くん自身が吹っ掛けるような真似をしたのかは知らないが、彼自身が喧嘩を好んでいないのは、表情からして一目瞭然。

前のように大人が相手ではなかったからか、はたまた冬獅郎くんが冷静な状態だったからか、今回は声をかけることができた私に、一斉に視線が寄せられた。



ひるんだような小学生、対して意地かプライドか、堂々としたままの中学生。

なんだこの女、と言わんばかりの目で私をねめつけた。



「おばさんは引っ込んでてくんね? 邪ぁ〜魔」

「弟を返してくれたらね」

「はあ? 弟? ってこれデスカ?」



胸倉つかんだ状態のまま、冬獅郎くんをぷらぷら揺さぶって、マジで、とか言いながら嗤っている。



うん、カンに障るガキンチョだ。


冬獅郎くんも決して甘んじているわけではなくて、ブチ切れてこそないものの、表情が冷たい。この上なく冷酷になっている。
いや、これが彼でいうところのキレている、状態なのか。



「なあ伸二、こいつなんだろ? この辺シメてやがんのとか」

「え、うん、ああ」

「つー訳で、ちょっと調教してお返しするんでー、おばさんは引っ込んでてくれますかー?」



シメる? 調教?

意味が理解できずポカンとしている私に、相手のほうは分かったらしい。



「マジ調子乗ってるガキとか、早い内にルール教えとかないとダメっしょ」
「っんと、こっちキレてるんすよ、コイツが舐めた真似してくれっからー、この辺の規律ってぇの?」
「姉貴さんの教育が悪いからさぁ、こーゆー迷惑なガキが出てくんだって」



言いたい放題に開いた口も塞がらない。

その間に中学生は、なあ、と言いながら冬獅郎くんの前髪をわしづかみにした。



その瞬間、それまで動かなかった冬獅郎くんは、思いっきりその手を打ち払った。



「ってんじゃねぇぞごるぁぁあ!! 調子乗りやがってクソガキ!」



逆上した中学生が、まだつかんだままだった胸倉を押し返し、木の幹に冬獅郎くんを思いっきり打ち付けた。


ゴンッという鈍い音がして、頭を打ったのが死角からでも分かった。
血の気が引いた。



「やめて!」



慌てて駆け寄れば、後ろから襟首をもう一人の中学生に引っつかまれて、後方へそのまま力の限り投げ出された。


土の上の木の葉や枝があちこちを引っ掻いたが、それよりこけた体勢が悪くてすぐに起き上がれなかった。

中学生は縛めを解こうと身をよじった冬獅郎くんをもう一度木にたたき付け、殴ろうとこぶしを振り上げたが、先に繰り出された膝蹴りに腹を抱えた。



なんだかんだ、なよっちい現代っ子だ。



けれど今が好機とばかりに一斉に殴り掛かった他のメンバーに、冬獅郎くんが応戦しようとしたのか体勢を整えたとき、横槍が入った。



「なーにしてんだ? 兄さんたち」



細身のジーンズとTシャツ姿の小柄な少年が、ポリポリと頭をかきながら現れた。





オレンジ色の、短い髪。





「イジメ? リンチ? しかも年下と女相手に大人数たあ、いい根性してマスねー」

「っるせぇ、どこのガキだ!」

「黒崎一護、今からてめぇを倒す男だ。―――よろしく」



オレンジ少年はそう言って、ニッと口角を引き上げた。

















。.。.。.。.。.。.。.

…………とりあえず謝ります、ごめんなさい。

更新遅れてゴメンナサイ台詞外文章長くてゴメンナサイ一護偽物でゴメンナサイ色んな方々のレス止めててゴメンナサイ



話だけなら、何日も前に出来てたんです。あと三話分位ならもう出来てるんです。

いかんせん、私の頭を悩ませたのはオレンジ少年。



彼って、どんな喋り方しましたっけ。
それだけのためにgdgd掲載は遅れ……結局ほぼ無修正で、2話更新しましたゴメンナサイ。



アンケ三位の一護を出させていただきました。が、アンケの項目はそのまま消去せずに置いておきますので、何かこんなシーンみたい!とかあったら気軽にカキコしてやってくださいませ(ちゃっかりネタ集め


アンケ、結構意外でしたねぇ。
乱菊姐さんと一護の一騎打ちになるかと思いきや、まさかのギンさん断トツトップ(笑)

愛されてますねえ。暫定四位に修兵が食い込んで来るとは思いませんでしたが、連続投票が酷かったのでなんとも言えないんですがね。


コメント重視で参りたいと思います。



ちなみに簡単に説明しとくと、一護はシロと同い年で他校設定になりました。

ぶっちゃけ、まだまだ出すつもりありませんでした。現実時間で半年位は出ない予定でした←


まあ…一度思い立ってしまったら引き返せないのが管理人ですからねー……仕方ない。






拍手&BBSレスも、必ずさせていただきますので!

長らくお待たせの方々、ホントに申し訳ございませんが、もうしばらく待ってやって下さいマセ……

管理人の大事な太陽炉ですからね。






サンホラとFictionJunctionYUUKAを聞きまくってます。

ぬぁぁああ、日付が変わってしまった…!
08.5.19


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