037
「いつ!? ねぇ、いつっ!?」
「次の次の組だから、ちょっと大人しく待てって言ってるじゃないですか!」
運動会といえば、な徒競走がはじまって、拍車をかけて落ち着きがなくなってきた母を宥めすかし、プログラムを押し付ける。
既に五年生の番になっていて、女子の部は終了していた。
隣では、仕事用の一番いいカメラを持ち出し、既に臨戦体制な父。
昨晩ガンマイクまで装備してこようとしていたのを、恥ずかしいからやめてと、押し止めるのに苦労しました。
「あれ……?」
そんな中で、私が異変に気付いたのは、ふと徒競走のスタート地点に目をやった時だった。
出番が次のはずの冬ちゃんの姿が、次の出走グループの中に見当たらない。
二番手、三番手を見ても見当たらないから、首をかしげるしかなかった。
スタート地点では、先生方が何か話し込んでいるようだった。
何が起きているのか私には分からないまま、次々に五年男子が走り終わっていく。
いつまで経っても冬獅郎くんが現れないから、母に嘘つき呼ばわりされながらも、どうすることもできずにただ見守っているしかない。
そうして残り三組になった時、
あぁ、来た。
保護者席に面した百m走のコースのスタート地点に、保護者席から滑りこむようにして冬獅郎くんが現れた。
遠目には確認しづらいが、少し肩を上下させているところを見ると、走ってきたのだろうか。
トイレでも行ってたのか?
結局冬獅郎くんは、最終出走グループに加えられて、まだ息も整わない内のスタートとなってしまった。
「お父さん、ちゃんと回してる!?」
冬獅郎くんから目を離さないまま、何度も母がバシバシとお父さんを叩いてカメラを確認している。
スターターを使わないスタート地点で、先生がピストルを上に掲げるのが見えた。
保護者席のやんやの歓声に、スタートの合図は掻き消される。
黒光りする小さなピストルから、白煙が微かに上がったのだけが視認できた。
いっせいに動き出した四つの影。その中で一際小さい影が、スタートに出遅れたのは、ゴール少し手前にいる私からもはっきりと分かるほどだった。
あらあらら、なんて言ってる間もなく。
すぐに小さな白い獅子の猛追は始まった。
スタートダッシュこそ、上げた腰は重そうだった。
しかしその身の丈に合わない程のストライドと足の回転。冬獅郎くんが風のようにも見えるし、他の男の子がスロー再生されているようにも見えた。
隣で母が何か言ったが、それもよく聞き取れなかった。
「頑張れ!」
目の前に差し掛かった時、声をかけた。
周りの声も相当凄かったから、聞こえるとも思っていなかったのだが。
もはや体幾つ分も飛び抜けていた小柄な少年は、真っ直ぐ前を―――と言っても、どこにも焦点は合っていなかったが―――見ていたが、ちょうど私が彼の額に浮かんだ汗の粒をはっきり見ることが出来る所まで来た時、すっと冬獅郎くんの視線がこちらに流れてきて、翡翠と目が合った。
いつもの無表情、ただ口が少し開いてなんだか新鮮ささえ覚えるような顔付き。
私が座っていて目線が下にあるからだろうか、やけに冬獅郎くんが普段より幼さを無くして見えた。
随分しっかりと冬獅郎くんの顔を見ることが出来たから、そんなに一瞬のことでもないような気がしたが、はっと我に返った時には、既にマイ弟がゴールテープを切っていた。
隣で母が黄色い声を上げているのを聞きながら、私はなんとなく天を仰いだ。
眩しいばかりの太陽に目がくらんで視線を戻した時には、先の100m走の英雄はこちらに背を向けて、自分の体に絡んだゴールテープの白い布をだるそうに係員に手渡している所だった。
相変わらず、歳不相応に小さい背中。だが、頼りなくさえあったそれが、なんだかしっかりして見えた。
。.。.。.。.。.。.。.。.。
シロって足早いんでしょうかね?
当然、原作では運動バリバリ出来るんでしょうけど、なんだか管理人の脳内では夜一さんとカケッコして、ボロクソに負けてる様が浮かぶんですが(笑)
今、まるマのキャラソン聞きながら書いてたんですが、有利=神田=薬売りという公式を思い出して悶えてました。
いや、神田には聞こえても薬売りって感じはしませんがね。
全然関係ない話してスミマセ……
てゆか、色々サイト変更したり移動させたりさせたいものがあるんですが……五月になりそうですね(-.-;)
年明け(暮れ?)位から、神田長編も脳内にずっとあるんですが、コレは日の目を見る日は来るのだろうか(聞かれても
まあ書いても間違いなく不定期連載でしょうけど(ヘタレ
明日は一年ぶりに会う先輩と今日も顔合わせた後輩各一名がウチに遊びに来るので、朝からみたらし団子を作ろうと思う。
昆布を水に戻してきます(。-∀-)♪
08.4.26
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