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「はい、これとこれで忘れ物はない?」



マイ弟が顎を引くのを確認して、よしっと冬獅郎くんの肩を叩く。



「私はお母さんをたたき起こしたら行くからね。グラウンドのどこかにはいるから、出来るだけ早い内に見つけておいてね」



頷くものの、普段にまして反応の薄い気がする冬獅郎くんを玄関から送り出した。

いつもより30分、早い登校だからかな。


相変わらずの見た目通りの低血圧に、浮世離れオーラが倍増されている。

最近はマニアックな変質者が増えてるらしいが、あの類を見ない美人さんはショタコンの格好の標的にされかねないのではないだろうか。


ところがどっこい、見た目程にはか弱くないもんだから、そこまで心配もしていないのだが。





うーんとうなりつつリビングに戻り、テーブルの上に乗っていたお弁当を風呂敷に包む。

昨日の内に、おかずのほとんどは作ってしまっていた。
もちろん母上も一緒に支度した。一応主婦のハズですからね。



当然のごとく彼女は朝はねぼすけなので、今朝の仕上げは私がやった。

まあしかし、こちらは低血圧でもなんでもない、ただのマグロだ。




「ほら、おかーさーん。そろそろ起きないと冬ちゃんの勇姿見れないよー知らないよー後で八つ当たりしないでよー」


こう言って忠告したところで、無理矢理でも起こしておかないと結局はどつき回されることになるから、文字通り母をたたき起こして洗面所に引きずっていった。

















「重いーー祐ちゃん、荷物重いーー」

「何言ってるの、私にほとんど持たせておいて」

「あーあ、知らないんだ。ここで体力使い果たして私が親子競技でビリになっても祐ちゃんはいいんだー。しろちゃんに言ってやろ」

「体力使い果たしてたらお父さんに親子競技出てもらうから、存分に使い果たして下さい、ハイどうぞ」



さすがに一人で持つにはキツかったおにぎりのタッパの入った紙袋を、ニッコリ笑ってお母さんの荷物に加える。

うん、実際重いにも程があった。


運動会は駐車場が混むから車で行けないし、また行くべきでもないだろう。
自転車だって似たようなものだ。





ようやく見えてきた小学校に、先に家を出て場所取りしてたはずの父上を探す。



たいした都会でもないので存分に広いグランドは、既に人で埋まりつつあり、トラックを囲むようにして用意された保護者席は敷かれているはずのビニールシートも見えない位に人が溢れかえっていた。


見渡せば、校庭と道路を分ける金網のそばには、まるで壁の花のように、小学生と思われる他校生の姿がちらほら。

私の世代ではあまり見かけなかった光景だ。




以前、同級生の妹から聞いた話、今どきは、小学校や中学校も、他校の子供が出会い目当てに乗り込んでくることが当然のようになっているのだとか。

私なんて、そんなのは高校の文化祭で馴染みの出来た事だが、うーん、これは時代なのか。


しかしその妹さんは、そういうのに行くのはほとんど女子だと聞いたのに、今見る限りでは男子も少なくない気がした。それも、中学生もいるようだし。





一体世の中どんなペースで回ってんだ、とかぼやくのとほぼ同時、少し色褪せたような青空に開会の白煙が撃ち鳴らされた。

















入場行進、何百人いる生徒の中からマイ弟を見つけることは、思ったよりも難儀なことだった。


あの類を見ない真っ白な髪だ、簡単に目に留まるはず、とタカをくくっていたのだが、彼らは一様に紅白帽なるものをかぶっているわけで。


まして冬獅郎くんは白組で、しかも背が……まあ平均に比べれば低めで、ついでにいえばこの年頃は女子の方が背が高いなんてこともザラで。
悪条件が揃いすぎて、見つけにくいことこの上なかった。





五年生がどの一団か鑑別している間に、みんな順に列になって保護者席と離れた生徒席に戻りはじめてしまう。


隣でカメラの用意に余念のない両親は放っておいて、必死で視線を走らせる。けれども、私はこういうのは滅法不得手なのだ。ウォーリーを捜せなんて、まず見つかったことがございません。

あれって本当にウォーリーいるの?




半ばなげやりになりはじめて首を巡らせた時、ふと視線を感じて顔の向きを戻した。


途端かちあった翡翠の双眸。


まだ行進をはじめていない列の中で、こちらをじっと見つめていたようだった。

私と目が合うとすぐに逸らされた視線の持ち主は、そのまま列の移動に伴ってグランドの反対側に帰っていってしまった。





ふと周囲を見渡して、感嘆のため息。
生徒なんかよりも余程混雑し、多種多様な格好の人達で溢れたこの保護者席から、よく私を見つけられたものだ。





視力はいいので、離れた生徒席の一番先頭に座る冬ちゃんを見遣ると、彼に注がれている他の視線に気付く。

現時点で白髪は余り目立たないので、視線の元は主に冬獅郎くんの周りにいる女子生徒で。

ずいぶん熱心な視線もあるようで、苦笑してしまった。


モテモテなのだろうか。しかし、当の本人はまるで我関せずの様子で、気付いているのかも怪しいものだが、あれが普段なのだから恐らく視線そのものには気付いてはいるのはずだ。





彼を脅かすのは何も不審者だけではなかったかと、早々にマイ弟にチェックを入れているらしい他校生の女子に、思いがけず己の過保護な一面を発見。

この時、自重するべしと冬獅郎くんから顔を逸らしたせいで、彼に視線を注ぐのが女子だけではなかったことには、気付けなかった。
















。.。.。.。.。.。.。.。.

やっとこさ更新できた…(´Д`)

とかいいつつ、運動会編の序章だけとか、ホント申し訳ございません(;___)

何か起きそうですね、運動会( ̄ー ̄)
でもロクにプランを練ってるわけでもないのが管理人(最低

大丈夫だろうかシロ………←





そろそろ、世間的には一段落つきはじめる時期ですかね。それとも本格的に忙しくなる方もいらっしゃるでしょうか。



管理人は、ペンタブの色塗りソフト、フォトショの使い方が意味不明すぎて、ハウツー本を探しに本屋行きたいんですが、当分行けない感じですかね(-.-;)

直線の引き方も分からないって、だいぶ酷いと思うんですよね。

研究してる余裕もないので、手っ取り早くハウツー本を………


浮竹さん描こうとしたけど、下書きハンパで終わってるから可哀相だよ。私が(ぁ

一日が30時間だったらいいと思う今日この頃。





08.4.17


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