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休日の朝。

ちなみに今日は日曜日だが、昨日は休みにも関わらず役員の都合で学校に缶詰にされた。


しかもその大半を体育祭の準備に使われたのが、未だにどうにも腑に落ちない。

ことわっておくが、私は文化祭役員だ。





ごそごそと布団から起き出し、隣の布団でまだ寝ている冬獅郎くんの足元を横切って部屋の外へ。





ああ、そういえば、あれから一部の人達にやたらと人気者になったマイ弟。

もちろんあの塾組との一件で知られてしまったわけだが、養子縁組という特殊な話だけに、むやみやたらと広言しないでくれたのはありがたいことだった。


まぁ……表面化していないだけで、あのA子さんが黙っていられる性格かどうかはまた別問題ではあるが。


あれから顔をあわせる度、「また冬獅郎に会わせてね」と満面の笑顔で言われる。





ため息をついて、リビングに入った。

今日はまた夏が引き返したように暑い。本当に、カレンダーで日付を何度も確かめたくなる程蒸し暑い。


たまらずリビングのエアコンを入れて、朝ごはんの前にシャワー。

昨日は涼しさに油断して扇風機をつけないで寝たから、寝汗がひどいものだ。



冬獅郎くんがまだ起きてくる気配がないのを確認してから、リビングが冷やされる間にとささやかな避暑地へ逃げ込んだ。

















「…………あれ?」



シャワーから戻り、それなりに涼しくなっていたリビングで一人朝食をとり、昼もまわって久しぶりに素麺の手抜きランチをこしらえようかと乾麺を手にしたところで、はたと止まる。


冬獅郎くんが起きてこない。


休日は起床が遅れがちになるのは子供ばかりの話ではないと思うが、低血圧なのか冬獅郎くんはおおかた目覚めがよくない。

起きてもしばらくは頭を重そうにしているし、普段はぱっちり開いている翡翠の目も伏し目がちだ。



基本的に起床は、別段早起きというわけでもない私の方が先なわけだが、それでも私が起き出すと目が覚めるのか、遅くとも私の起きた一時間以内には必ず起きてくる。





「うーん、遠慮か?」



悪いと思って、今まで無理矢理起床時間を合わせていたのだろうか。

それならこの惰眠はむしろ喜ぶべきものだろうが………



いきなり遅くなりすぎやしないだろうか?





ひとまず湯を沸かす火を止め、自室へ向かう。

暑さより湿度を感じる廊下を抜けて部屋の扉を開ければ、ぬるい空気が流れてきた。



寝冷えを防ぐため、エアコン代わりに回した扇風機が、冬獅郎くんの白髪を揺らしていた。


布団の横に行って、冬獅郎くんを覗き込むと、まだ目は閉じられていた。
しかしそれよりも、やけに流れた汗が目につく。

それはびっしょり、という言葉が適する程で、明らかに尋常ではなかった。



「冬ちゃん? 冬獅郎くん、起きて」



近くにあったハンドタオルを引き寄せ、顔の汗を拭いてやりながら呼びかけると、喉から小さく声が鳴る。

低い声のそれは、うめき声のようにも聞こえた。



うすら、と開かれた薄い瞼の下から透き通った緑が現れる。

未だ、この色と白髪には慣れない。思わず見入ってしまう。



「気分悪い?」



白い額に手を当てて尋ねたが、冬獅郎くんは重そうに首を左右に振った。


額からも熱は感じられなくて、むしろ冷たかった。



冬獅郎くんが起き上がろうとして上半身を引き起こしたが、どうにもだるそうなのが見て分かる。


細い首にも触れてみるが、額と同じで熱はない。だが、脇に手を差し込んで、



………熱い。燃えるように熱い。



「おいで」



すぐに冬獅郎くんを抱え上げて――また痩せた?(泣)――リビングに走った。

クーラーの効いた居間に下ろし、引き出しから引っ張り出した体温計を耳に当てる。

一瞬で計測され、表示された数字に口をあんぐりと開けた。



38度2分。



少し悩んでから思い至った可能性は二つ。
風邪か、熱中症か。



すぐに両親の部屋に走り、棚から【身近な病気】という本を抜き取ってページをめくった。とにかくめくった。



「熱疲労……?」



熱中症の項目にあったその症状は、まさに今の冬獅郎くんとぴったり一致していた。
皮膚は冷たく、多量の発汗に39度までの高熱、意識は正常。



本を抱えて、再びリビングまで駆け戻った。



必要なものを早急に揃えて、冬獅郎くんの元まで戻るとすぐに応急処置施した。

半袖パジャマの前をはだけさせ、脇と太腿に冷えピタ、砂糖と塩を混ぜた水を飲ませて水分補給をし、霧吹きをかけてとにかく体温を下げさせる。
後は全力でうちわで扇いだ。


本に書いてあることは一通りやった。


救急車を呼ぶことも厭わずに、と本には書いてある。
熱中症とは、そんなに怖いものなのかと身震い。

応急処置を終えてもう一度体温を計ってみたが、まぁ………変わらず。





救急車はなんなので、即行でタクシーを呼んだ。

















運転手さんにお願いしてガンガンにクーラーを入れていただいて、近くの救急患者対応の総合病院に冬獅郎くんを抱えて駆け込んだ。


経緯を説明すると、お医者さんから適切な応急処置だったとおほめのお言葉をいただいた。
喜べることでもないので、慰め程度に受け取らせていただく。


幸いなことに熱射病までは悪化しなかったので、輸液をした後、体温が下がったところで思ったより早く帰宅が許された。

まだぐったりしたままの冬獅郎くんを抱いて家に戻り、空調の効いた居間に寝かせる。



ちなみに後で分かったことだが、冬獅郎くんが熱中症の類にかかったことはこれがはじめてではないらしく、彼は暑さには弱いようだ。



冬うまれだしね。見るからに夏に強そうでもない。



体中の力が抜けきったようにだらんとした冬獅郎くんの頭を撫で、



「……早く気付けなくてごめんね」



小さく寝息を立てるマイ弟に謝った。



「ん……」



不意に、少し体を揺するように動いた冬獅郎くんが、声をもらす。


………かわいい。


が、我慢。抱きしめるのは完全に回復してからにして、その時には心配かけてくれた分、まるまる体で払ってもらうことにして。



大事にならずに済んだことに息をついて、今はこの繊細で愛らしい小動物のお世話に勤しむことにした。















。.。.。.。.。.。.。.。.。.


どうも……絶賛絶望継続中の管理人です(-.-;)

日記にも書きましたが、PCデータ全消去という由々しき事態により、まぁ……消えましたよね、ヲタ友にもらったシロの画像も。


現在復旧に追われております。



連載更新のろくて申し訳ありません!
てか、夏に弱いネタ書くの忘れてました。
公式でシロは夏が苦手設定ですから、これは利用しない手はないですよね( ̄ー ̄)(酷


もっと看病であれやこれやを狙ってたっちゃ狙ってましたが(当然ね)
あまりに病弱みたいにするのもアレかなー?と、今回はここまで。

そろそろ夏の暑さも和らぐ時期ですし、夏弱いネタは来年に持ち越しですね。
まあ、多少今回も時期的に無理矢理だったわけです(笑)



しかし、連載と現実の季節がここまで見事に逆転してるのもないですよね。

真逆ですからね(笑)

ついでに、ほとんど現実と話が進むスピードが同じっていう。最近は現実の方が早いですけどねぇ………


ダメだ、このままじゃ完結に何年かかるんだ( ̄□ ̄;


スピード上げて!………行きたいです(願望かよ





拍手レス(in日記コメレス)、BBSお返事は明日以降に早急にさせていただきます、カキコいただきました方々、もう少々お待ち下さいマセ!


08.3.9


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