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会計を済ませてから立ち寄った、別テナントの書籍コーナー。



見慣れた出版社名に、手に取った週刊誌は、“勝ちゃん”の編集するあの雑誌。

ぱらぱらのめくれば、ロシア事件のことが、六ページ組の特集になってました。


白黒刷りだから、また母上が文句を言うだろうけど……

六ページもフリージャーナリストに完全に任されてる辺り、彼らの信頼関係は相当なものだと思うのだが。



この雑誌はまた本人から貰えるからと棚に戻し、ちょっと気を重くしながら振り返った参考書コーナー。



「……冬ちゃん、一緒に頑張ろうか」



高二英語の問題集を手に取った私に、冬獅郎くんは小学生向けのドリルへと目をやった。







「あれ? 内田?」

「ホントだ、祐だ」





不意に耳に飛び込んだ、自分の名前。


何も考える前に振り返ると、見覚えのある面子……というか、少し前に学校で別れたばかりの、同級生たち。


同学年なのだろうがあまり知らない人もいたが、まだ制服姿のところを見ると、塾メンバーか。


そう言えば、ここに入っているファーストフード店を時間潰しによく使うかとがあると、誰だったかが言っていた覚えも。



うーん、タイミングが悪かったか。



「なになに、なに買ってるの?」


私が腕から下げた買い物袋を覗き込む、クラスメート花牧さん。

それなりに仲はいい方……というか、彼女が人懐っこいタチなので、よく話します。



「豆乳……渋っ! 渋いよ祐!」

「えー、あたしも普通に飲む派ですけど」

「え、マジ?」

「お肌にいいのですよー」



はいはい。

しかたがないから、買ったばかりの袋入りのハイ○ュウを二個ずつ分けてやって、



………こういうことやってるから、お母さんとか言われるのかな。



「ねえねえ祐、ちょっと来て」



期間限定味のハイ○ュウについてうんちくたれはじめた男子の横で、女子三人に引っ張って連れ出された。


ちらっと後ろを確認すれば、塾組に話しかけられた時からずっと参考書見てた冬獅郎くんが、少しこちらに視線を向けていた。


声をかけるヒマもなく、少し離れた少年マンガコーナーの列に連れ込まれ、



「祐の横にいた男の子、見た?」

「あ、やっぱり男の子だったんだ」

「いやいや、さすがに男の子だったでしょ」

「下手したら女の子でもアリじゃない?」



………ないと思います。



いや、アリなのか? 人並み外れた美貌を思い浮かべながら悶々としかけてしまいつつ、


やっぱり、しっかり確認されていたマイ弟。

まあ別段気にとめずとも目立ちまくる冬獅郎くんだから、彼女たちの視界に入っていないなんてことはないだろうとは思ってましたけど。



やっぱり……存在感アリアリですよね……



「なんか人形みたいじゃない? 超美人ー」

「肌白すぎだよね、うらやましいわぁ」

「いや、肌ネタもういいから」



あははー……どうしましょ。

聞かれたら隠す必要めないと思うんだけど、これはちょっとタイミング的に悪い気も。



まだ、冬獅郎くんをあまり刺激したくないんだけどなぁ。まあ……仮に彼女たちが話しかけたところつ、結果は見えてるような……気も。



「あれって日本人かな? 地毛っぽくない? ねえ祐、親とか見かけた?」

「あーー……」

「なんか顔かわいー」

「あ"ーーー……」

「みてみて、目ぇ緑だよ!」

「マジで!?」

「ごめんなさい私の弟ですその辺で勘弁してやってください」



ほとんど隠れている意味がないくらいに身を乗り出した三人に、泣きを入れた。

もともとが敏感な子だけに、もう冬獅郎くんだって気付いているだろう。


これじゃあ、ごまかす方がタチが悪い。



『はあ?』



案の定、ぽかーんとした顔になった女子たち。





結局、こうなりました。

















「いやー、もうマジかわいいんだけど」

「ずるい、あたしも欲しーこんな弟ー」

「すげぇな内田、お前ん家すごい事なってんだな」



さんざん塾メンバーにいじられることになった冬獅郎くん。


まあ予想通りといおうか、私の背後で直立不動のいつもの人形状態になっておられますけどね。


そしてそれを全く気にしない塾組。


わざとどっちもKYに徹しているのか? と思うくらい、客観的に様子を見ていると奇妙な光景だった。



「えーーーっと、みなさま塾の方は…?」

「大丈夫! まだ余裕! つか遅れてもオッケー!」

「えぇ〜……」

「あ、だめだ、前も遅れて説教くらったんだった」

「逝ってらっしゃいマセ」

「うっそー……」



名残惜しそうにされていらっしゃいましたが、花牧さんを皆さんで引っ張って連行して逝かれました。


……助かった。





自分の後ろを見れば、平積みの書籍を見下ろした状態で微動だにしないマイ弟。



「ごめん、悪かった」



よしよし、と頭を抱え込んでなでたくり、塾組が来る前に目をつけていた英語の参考書を手にする。

冬ちゃんの分の四教科総合参考書と一緒にお会計。





外に出ると、すでに空は焼けはじめて見事な橙色に染まっていた。


暑さの和らいだ道に自転車をこぎだせば、長い下り坂で心地よい風を受ける。



「明日はいい天気でしょうかねー?」



空を仰ぎながら、帰路をたどりはじめる。



スピードを上げだした自転車に、後ろに乗る冬獅郎くんが、背中のシャツをつまむようにしてキュッとつかまった。

















。.。.。.。.。.。.。.。.。

現在、継続して桜ホスのキャラソンがかかっております(。-∀-)♪


今週中には溜めたままの拍手レスとBBSをカキコミさせていただきますので、お待たせしとおります方々、もうしばしご猶予の程を(;___)



ところで、部屋の観葉植物のパキラ(約30cm)が冬になって葉を落とし、新芽しか残っておりません。

今にも枯れそうです(┰_┰)


去年の秋にちょっとしたお祝い(?)で買ってもらったんですが、去年も冬に葉を落としたので、余裕ぶっこいて見守っていたら、カナリ危ない状態になりました。

元は熱帯植物……マイナスになる北の大地は厳しすぎたか(;´・`)



かくいう管理人も、生まれは大阪。血筋も関西。

寒さには……バリバリ強いです(ぇ


雪など毎年降るか降らないかの大阪で、雪の降る日に生まれたからでしょうかね……




あとがき書いてる間、
すももも→最遊記→ガンダムと曲が変わりました(´∀`)(何報告


08.2.28


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