031
「はい、ただいまさん」
家の扉が、いつもよりも重く感じた。
まぁ実際のところ、重かったのは私の心の方なわけで。
英語のね、テストの点数が悪かったんですよ……
アハハー、単位取れるかなぁっ?
「うん?」
一階の郵便受けから持ってきた郵便物の中に、国際郵便を見つけ、何事かと思った。
今までにも、外国取材に赴いた母からまれに絵葉書が届いたことはあったが、多くは航空便が葉書を届けるより先に本人達が帰ってくるので、滅多にはないことだった。
第一、国政状況が悪すぎてまともに郵便事業が機能していない場合も多かった。
まして、封筒でだなんて尚更。
送られてくることがあったとしても絵葉書ばっかりで(その方が色々都合がいいらしい)、封書で届いた事は一度もなかった。
それでも宛名が自分であることに意外性を感じつつ、見れば差出人はひどく馴染みのある名前であった。
アメリカからの便りは、腐れ縁と化しつつある我が幼なじみ兼親友から。
彼女は学校からの海外留学で今年の夏休み入ってすぐアメリカに飛び、一年は帰らない。
私とは正反対にずば抜けて英語が得意だった彼女を思い、ため息。
ここにいてくれたら英語も教えてもらえただろうにと嘆きつつ、その時には自分がその他の教科を彼女に教えることになるのだと笑った。
まだ離れてそう日にちも経っていないのに、一緒に期末テストの勉強をしたことがずいぶん懐かしんで思えた。
「お、冬ちゃんただいま」
部屋に入って見つけたマイ弟に、恒例の挨拶。
逸らしそうで逸らされなかった翡翠の瞳に、ちょっとニヤリと笑んでしまった。
「これから買い物に行くんだけどね。いつものスーパーじゃなくて、色々売ってる大きい方の……」
カバンを置いてTシャツとジーンズに着替えながら言えば、今まで開いていた教科書を閉じ、立ち上がる冬獅郎くん。
…あれ。
いやまあ、一緒に連れていこうとは思ってましたけれど、こんなに素直に自分から行く姿勢を取ってくれるとは思ってませんでした。
財布と携帯をポケットに突っ込んだ私を確認して、部屋を出ていく冬ちゃんを目で追いながら、
うーん、これぞ家族。
無言の意思の疎通ね、と胸中でぼやいてみた。
マンションをおりて、少し迷った後、荷台の付いている母の自転車を借りることにして、後ろに冬ちゃんを乗せることにした。
いつものスーパーよりはちょっと遠いし、荷物も重くなりそうだし。
何より、風を切った方が涼しい。
「はい、出航ー」
いつもより少し重いペダルをこぎ出した。
「冬獅郎くん、そういえば嫌いな食べ物ってある?」
ころころとカートを押しながら振り返ると、冬獅郎くんはゆっくり視線を巡らせたあと、ふっと指をさす。
それを目で追えば、
納豆、豆腐、薄揚げ…が並んだコーナー。
………どれ?
しかし様子を見ていると、どうやらその近辺のもの、大半らしい。
うーん、たしかに 好き嫌いの分かれる食品だが。
私的には、よく食事に使う定番品だったりするので、ちょっとショックだった。
まあ好きじゃないというなら避けてやりたいところではあるが……健康と好き嫌い改善のため、鬼にならせていただきます。
薄揚げはおいなりさんにすればまだ食べられるかな。
豆腐は木綿より絹の方が癖を感じにくい気がするが……卵豆腐から入った方が無難だろうか。
でもあれは豆腐じゃないしと訂正を入れて、
薄揚げと共に豆乳を購入し、豆乳で卵豆腐もどきのようなものを作ることにした。
こういう系統の癖に慣れれば、食べられるようになるだろう。
薄揚げと豆乳をカートのカゴに入れたら、後ろでなんだか沈んだようなオーラを感じたけれど。
愛のムチに基づき鬼になった私に、そんな可愛い反応したって、通じません。
流れるように、スルーさせていただいた。
。.。.。.。.。.。.。.。.。
お待たせ致しました(;___)
一先ず管理人に時間の空きが確保できましたので、アップさせていただきました。
拍手などで暖かいお言葉を下さいました方々も、本当にありがとうございました・゜・(ノД`)
ついでにシロに勝手に好き嫌い捏造してしまいましたが(笑)
アレはヒロインの努力によって今後克服される見通しでございますので、お許し下さいませ。
克服されない嫌いなものは、公式通り干し柿ということで。
管理人も干し柿ダメです。好き嫌い基本的にないんですけど、干し柿や熟れた柿のあの溶け具合はもうたまらないですね(笑)
無理矢理食べさせられて耐え切れなかった時は、もう飲み込みました。
前は豆乳もあまり得意ではなかったんですけど、最近口にしてないので克服具合は謎です。
あ、このスーパー編、32話に続きます(^▽^)ノ
今、シャッフルかけてたケータイのミュージックで、ちょうど種をまく日々が流れてました(´∀`)
ちなみにその前はハレ晴れ愉快だったり(笑)
浮気なアニソンストックです(。-∀-)♪
08.2.28
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