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「はい、これが給食費で、こっちが体操着でしょ。あ、あとこれはカバンの内ポケットに入れておいてね」



朝食を済ませた後、茶封筒と白い袋、それから小さな巾着を冬獅郎くんに手渡した。


巾着の中には多少のお金。
まぁ本来は学校にお金は持っていっちゃいけないんだけど……


そこは私の、心配な親心な訳です。



「万が一何かあったら、そのお金使うのよ。あ、帰り道の買い食いはダメだからね。それは一度帰ってきてから、こっちのお金でね」


そう言って500円玉をマイ弟の手に落とした。



「それは母上からのお小遣い。ちなみに中学は千円、高校は二千円に昇給して、イベントなんかがある時は特別手当が出るんだけど……まぁ基本彼らは家にいなくてイベントの有無事態分かってないから、何かあったら通帳握ってるお姉さんに言いなさい」



さてと。これで渡すものは全部だったかな。

時計をちらりと見上げ、そろそろ家を出るべき時間と知る。


今日からは私も高校が始まって、昨日までより一緒にいられる時間は格段に減る。


昨日も冬獅郎くんが帰ってくるまでは別行動だったと思うも、自分もしばらく帰ってこれないとなると、変に不安度が増すものだ。



「冬ちゃん……」



真剣な顔で冬獅郎くんの両肩を持つと、宝石みたいに真ん丸な翡翠の瞳がまっすぐ見上げる。

それを見つめ返して、



「変な人について行ったら駄目よ…!」



そうして抱きしめ、



「こんなに綺麗な顔だと、普通の人でも魔がさしてさらっちゃいそうだし」



白い髪に頬ずりする私に頓着せず、冬獅郎くんは、ふい、と壁掛け時計を見上げる。

その何気ない仕草が、この無口な美少年にとっての意思表示に等しく。


要するに、時間を急かされているのだ。



「……………行きましょうか」



もはや脱力して、夏休みの宿題で重たくなっている自分のカバンを取り上げ、火の元電気を確認して外に出、鍵をかける。



「それじゃあこれも渡しておくから、家の鍵」



はれて冬獅郎くんも鍵っ子デビューか……と奇妙な感慨に浸りながら、エレベーターで一階に降り、道を歩く。


私の高校は近さだけで選んだおかげで、徒歩通学。
自転車は、下手をすると素行の悪い人達によって駐輪場が荒らされる可能性があるので、特別な事情がない限り遠慮している。



「じゃ、ここまでだね」



まだマンションも視界に入る距離で、通学路は別々に。

忘れかけてた私の携帯番号と、念のための高校の住所も渡して、



「気をつけてねー」



手を振りながら、道を別れた。


冬獅郎くんはしばらくその場に立って、メモを見下ろし、それから私を見て、



ふっと持ち上げ、頼りない位に小さく振られた片手。



私が角を曲がる直前で見えたそれは、ほんの一瞬。


反射的に角を戻ってみるも、既にマイ弟の姿はなく、なんとも口惜しい別離となった。

















。.。.。.。.。.。.。.。.


手を振るシロがちょっと寂しそうだったりしたら、よだれが止まらない………(>艸<*)



08.1.17


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