023
それから一時間半後、一度家に帰ってから下校時刻に合わせ、教科書を大量に貰ってくるであろう冬獅郎くんを迎えに行った。
この辺りは通学路も複雑で、マンションからも遠い。
西門の近くまで行くと、ちょうど冬獅郎くんが行きに持たせた紙袋を片手に出て来るところだった。
グッドタイミング。
「おーい」
冬獅郎くんに声をかけたが。
彼の視線は道に落とされたまま。私行き場のない片手を上げた状態でが固まっていると、人形モードの冬獅郎くんは一定の歩調を崩すことなく、隣を通り過ぎかけた。
「おいおいおい」
くしゃりと白髪を撫でると、はっとしたように冬獅郎くんは顔を上げた。
人形モード解除。
ほっとしてため息をつく。
「ご苦労様、半分持つよ」
教科書やらプリントやらの入った紙袋を一つ手にとり、まだ彼の頭に乗せたままだった手で撫で撫で。
すると冬獅郎くんの手がゆっくり上がってきて、撫でていた私の手に触れた。
冬獅郎くん自身は俯いている。
相変わらず何を考えているか謎だ。
だが。
「帰ろっか」
そのまま手を繋いで、帰り道を辿った。
ゆっくり握り返してくる手に、
ゆっくりでいい。
いつか自分から歩み寄ってくれる時を期待しつつ、彼なりに私に対して心を許してくれていることは今日よく分かったから、やがて普通に笑い合える時まで、ゆったり待っていようと思った。
「あっ、冬ちゃん、ここちょっと寄ろう」
マンション近くの公園に引っ張っていき、持ってきた両親の古いカメラをちょうどいい高さの遊具に設置。
始業式の保護者陣を見て、思い立ったこと。
入学写真というわけではないけれど、記念に一枚、撮っておきたいではないか。
荷物をベンチに置かせると、彼を後ろから逃げないように抱き込んで、がっちりホールド。
マイ弟が軽くラリってる間に、
「ほら、シャッターおりちゃう!」
案の定抵抗を示した冬獅郎くんに、変な状態でパシャリ。
あーあ、と言うと、「だって」とでも言いたそうな顔で、どこか拗ねたようにそっぽを向いた
「見てよ、カメラあんなんなっちゃった」
私がカメラを指差し、何気なくそちらを向いたマイ弟。
決まったな。
パシャリ。
音の鳴ったカメラに瞠目した冬獅郎くん。
時間差でもう一枚撮るようセットしてました。
タネ明かしをして、にっと口角を上げる私に、なんとも言い難い表情の冬ちゃん。
「でもなあ。私フレームアウトしてたかもなあ。冬ちゃんと一緒に笑顔で写りたかったなあ」
なーんて。
わざとらしく言ってみれば。
ぎこちない動きで顔を反らした弟。
これは、落ちる。
「もう一枚だけ撮って欲しいなあ。冬ちゃんとちゃんと撮ったツーショット欲しいなーあ」
白髪の後頭部が、なんだか追い詰められている様子を物語っていた。
その間に悪魔の笑みをたたえた私は、再びカメラをセットし。
「冬ちゃん…一緒に撮ってくれたらお姉さん、とっても嬉しいんだけどなぁ」
渋々、本当にもう諦めた、といった感じで、ついに冬獅郎くんがこちらを向いた。
やったね私。
ブランコの前の柵に軽く腰掛けて、冬獅郎くんをもたれさせるように引き寄せて、
「はい、チーズ」
それから、現像した三枚目の写真の、冬獅郎くんの柔らかな表情に、鼻血が出そうなほど悶えたのは、別の話。
笑い合える日は、そう遠くないかもしれない。
。.。.。.。.。.。.。.。.。.。
いいなぁ……冬ちゃんと写真とりたぃ……
ところで、管理人は転校を小学校の間に二回したことがあります。
ちなみに最初の小学校が、全校生徒軽く千人越えるマンモス校だったんですけど、(母もこの小学校に通い、卒業)転校生も、新学期、毎度毎度来る数は半端なかったですね。
さてさて、地味に、シロが喋ってくれるまでの道は敷き、一応歩んで行ってはいるんですが。
いつになるのか、管理人にもさっぱりです。(ヲィ
次回かもしれないし、すんげぇ先かも………('◇')
でも、最初の言葉はこれがいいなぁってのはあります。
……カナリ自分Sだな、って思いましたけどね……。
とりあえず、学校生活どうやって進めるかすごい悩んでます……(┰_┰)
08.1.10
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