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「……………さすがです、母上」



もしやと思いつつ開いた、チェストの冬獅郎くんの段で見つけたそれに、脱帽した。


本当に冬獅郎くんと遊びまわるつもりだったんだなぁと、引っ張り出した白地に藍色の模様の浴衣。


新品のそれは、冬獅郎くんが来た次の日の買い物で母が買った物だろう。



「よっぽどあの人…冬ちゃんと遊びたかったんだな」



母の準備のよさに感謝して、有り難くこの浴衣を使わせていただくことにした。



「冬ちゃーん、おいでー」



声を上げて呼べば、自室にやってきた冬獅郎くん。
傍まで歩いて来た彼に、手にしていた浴衣を渡し、服を脱いで羽織るように告げた。



「帯は結んであげるから」



そう言って後ろを向き、財布やらの荷物の確認をする。
背後の動きが止まったところで声をかけてから振り返り、帯を冬獅郎くんの腰に回しながら、



「……ピッタリだなホント」



つぶやいた。


母強し。まさに愛の力だな。





子供用の帯を結ぶのは簡単だ。
すぐに着付けを済ませると、さて、出かける準備は整った。

すでに私は着替えを済ませていたから、巾着を手にすれば準備万端。



「では、夏祭りに行くとしましょう」



マイ弟の手を取って、夏休み最後のイベントに出撃した。

















この辺りで、一連の祭の最後になる夏祭り。
近所の市民グランドでやるもので、規模も大きくはないが、冬獅郎くんとの最初の夏休み最後の思い出だ。



「夏祭りといえば……まずはコレでしょう」



隣の冬獅郎くんの肩に手を置き、もう片手で一つの屋台を指差した。

色とりどりのビニールに包まれたまあるいものが吊されて並ぶそれは、夏祭りの定番、わたあめ。



そういえば昔、わたあめって安かった気がするけど、今結構高いよね……なんでだろう。



二つ買って、一つを冬獅郎くんに渡し、次の屋台を物色する。

日が沈むかという微妙な時間に来たのも、もちろん夕食はここで済ませて家事を減らす為だ。



「さぁて、どこから攻めようか?」



指でわたあめつまみつつ、ぐるりと見渡す。
ちゃんと手がベトベトになっても、ウェットティッシュは例年の教訓から持参しております。



「やっぱり……アレはやらなきゃだめだよね。夏祭りの義務だよね」



言いつつ近付いたのは、金魚すくい。

え、義務ですよね?夏祭りの。



「はい冬ちゃん」



一回二百円のポイを二つ受け取り、冬獅郎くんと青いビニールシートの中にいる金魚に狙いを定める。



「出目金て、よく見るとかわいいよね?みんな嫌がるけど」



半分独り言ねように呟いて、おとなしそうな出目ちゃんに狙いを定める。

その隣では美しい赤金魚を追うマイ弟。



……なんかここですら格差を感じるのですが。



「や……破けそう」



慎重にポイを動かしながら、出目金を追う。
が、ここ一番で素早い動きを見せる出目。

やるではないか。



「おお、坊主上手いじゃねーか」



屋台のおじ様の声に顔をあげれば、例の美人金魚を掬い上げた美人弟。



「早っ。……くそぅ、私だって……………うわっ、半分破けたっ」



小窓の開いたポイを前に首を折る。
しかし、これしきで諦めるものか。


穴のあいたポイで粘り続けて、数十分。



撃沈。



もうどうしたって無理なほど、私のポイは綺麗に破れさった。



「昔は破れてからでもとれたのに……」

「残念だったなぁ、姉ちゃん」



屋台のおじ様に快活に笑われた。

もはや出るのはため息だけ。

せっかく冬ちゃんが美人赤金魚をゲットしたのだから、出目金とペアにして、家で飼おうと思っていたのに。


昔に夏祭りで掬った金魚を飼っていた、水槽やら砂利やらの在りかを脳内で探っていたのが、むなしすぎる。

ああ、夏休みの記念にと思ったのに。



「おっ、坊主やっちまったな」



顔を上げれば、破れたポイを片手にしている冬獅郎くん。

私のポイが半分破れてから、ずっと隣で私を見ていたようだったのだが。



収穫は二人合わせて、冬獅郎くんの美人金魚一匹か。と思っていると……


引かれた浴衣の袖。


マイ弟に引っ張られて見た、彼の器の中。


綺麗な赤金魚と黒い出目金とが、二匹仲良く、狭い器の中で泳いでいた。


その出目金は、間違いなく私が追っかけていたもの。
私は目を見開いてそれを見下ろした。



「ちょっと無理きかせて掬ったから、破けちまったんだな」



そう言ったおじ様は、袋に出目と美人金魚を入れてくれて、私に渡してくれた。



それをまだ少し呆然としたまま受け取って、そこにいる二匹の金魚を眺め。



「冬ちゃーーんっ!」



既に立ち上がり、ずっと曲げたままだった膝をのばしていたマイ弟に抱き着いた。



ああもう、取って食ってもいいですか。



頬ずりしたら、顔をそらした素っ気ない弟。
相変わらず照れ屋だ。

もちろんそう簡単には、解放してやらなかった。









さあ、明日には、水草と餌を買いに行かなければ。

















.。.。.。.。.。.。.。.。.

自分で言うのもアレなんですが、リベンジシロ萌え(>艸<*)

かわいい。愛しい。喰いたい………(ヲィ



この回書いて、プール編は失敗だったなと思いました。
夏祭りを長くやればよかった。


本当は、夏祭りはやらない予定でした。
お盆終わってるし。翌年に行かせるつもりでしたが、夏休み最後の話が思いつかなくて( ̄▽ ̄〃)


射的やらせるつもりだったのになあ。




ところで林檎飴を食べたことのない管理人。
あれって中どうなってるんですかね……?(´o`)

もっぱらわたあめ派でした。
わたあめ……最近高くないですか?昔100円200円だった気がするのに、最後に見た時450円位だったんですケド。



あ、一応管理人は、平成生まれの十代ですよ(笑)
戦後の人とかじゃあないです。




08.1.3


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