019
「あ、あれが第一小学校だよ」
指さす先には少しばかり古ぼけた横に長い校舎。
私も通った小学校。そして冬獅郎くんが通うことになる小学校だ。
この街をもう少し案内しようと思って、冬獅郎くんを連れ出した昼下がり。
そういえば、小学校のある方面には冬獅郎くんと来たことがなかった。
買い物する店は大方が反対方向。
今日の散歩にそんな意図はなかったが、学校を紹介するいい機会になった。
正門までやってきて、三階建ての校舎を見上げる。
いつも基本的に真顔な冬獅郎くんだが、なんだか視線が冷ややかなのは気のせいだろうか。
「おっ、内田じゃないか。久しぶりだなぁ」
振り返れば、裏門の方から大柄な男が快活に手を振って歩いてきていた。
もちろん見覚えのあるその人は、私がこの小学校に通っていた時からいた先生だ。
「あ…お久しぶりです」
「お前あんまり卒業してから来ないからなあ。会うの何年ぶりだろうな」
はっはっは、と背中を叩いてくる手が、相変わらず容赦ない。
「それで今日はどうした?」
「あ、えっとこっちの子が二学期からここに通うことになるんですけど」
「ん…?転校生か。何年だ?」
「五年生です」
「五年生の転校生は4人いたなぁ。おれは一年の学年主任だから詳しくは知らないんだよな。そうか、ほんでどこの子だ?」
「うちの子です」
「そうか。……うん!?」
元々顔のパーツの大きな人が、更に目が真ん丸になる。
リアクションがワイルドなのも相変わらずだ。
「お前……いつの間に産んだ?」
「記憶はないですね。冬獅郎くんは弟ですよ」
「あれ、お前兄弟いたか?」
「えぇ、半月前から」
これ以上開きようのないと思われた目が、満開の上を行った。
「ところで、手続きを母から任されてるんですけど」
「え? あ、ああ……もう教育委員会には届け出してんだろう?」
「はい、市役所には母が行ったので多分やったと」
「だったら始業式当日に来てくれたらいい。教育委員会から連絡が来てるはずだから」
私達が会話している間、冬獅郎くんは我関せずといった具合で余所を向いていた。
そのあと冬獅郎くんとはまるで正反対の人懐こい性格の先生は、めげるという言葉を知らないかのようににこやかに話しかけ続けていた。
が、もちろん冬獅郎くんが口を開くはずもなく。
それどころか首をふることもついぞなく、まるでうちにはじめて来た日のように人形の彼に戻っていた。
家に戻ってから。
いつも静かではあるが、ことさら冬獅郎くんのまとう空気がひっそり静まり返っている。
どうしたことかと、口を出すことはせず見守っていたのだが。
「電気消すよー」
髪を拭き終わって、冬獅郎くんが布団の上に行ったのを確認し、エアコンと電気を消して扇風機を回した。
カーテンを閉めても外灯やらの明かりで真っ暗にはなりきらない部屋の中を、自分の布団の上までたどりつく。
座った体勢のままタオルケットを足に掛けた時、隣のマイ弟を見ると、彼はぼうっとした様に布団の上に座り込んでいた。
「冬ちゃん?」
ゆっくりこちらを見た冬獅郎くんの目は、焦点こそ合っているものの、どこか頼りない感じがした。
「眠気がないの?」
返ってきた沈黙はどこか戸惑ったようなもの。
不思議に思って待ちながら様子を見ていると、少しこちらに向けられた冬獅郎くんの体。
ためらいがちに私の方へ伸ばされた手は、途中で落ちる。
これは一体どういうことだろうか。
冬獅郎くんの視線が私の横のスペースに向けられているのを確認し、今日はニュースで母の姿を見ていないことも記憶違いでないと確認してから、
「こっちで寝る?」
差し出すように尋ねてみた。
一度冬獅郎くんの顔が上がって私を見てから再び俯き、しばらくしてから体を起こしてこっちに寄ってきた。
あらあらまあ。
思いがけず隣にもぐりこんできたマイ弟に瞠目する。
自分でも普段からは考えられない行動を取っていると自覚しているのか、どこかいじけたような空気。
こうして見るとやっぱりまだまだかわいい小学生だと、頭をくしゃくしゃに撫でたくって自分も寝転び、横で丸まっているこの無駄に愛しい弟を抱きこんだ。
。.。.。.。.。.。.。.。
アハ。(´∀`)
シロが夜這いを仕掛けてきました。(違
新年に相応しい、大きな一歩ですね(ノ∀<*)←
でも、他サイト様に比べ、うちの子はもうどんだけって位に展開が遅いですね。
まだ姫に口もきいてないって、どうなんでしょうコレ(笑)
とりあえず、そろそろ夏休みは終わりますね。
キリがいいんで、次で夏休み終わりにしようかな。
管理人的になんか短かった気がするんですが、話数は20って結構立派な数字ですよねー………
数に見合うだけの中身になってればいいんですが(笑)
08.1.1
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