017
「冬ちゃーん、行くよー」
よく晴れた日。おそらく夏休みで一番暑くなりそうな日に、私達はプールに出掛けることにして、三つ離れた駅までの切符を買い、割と空いた電車に乗り込んだ。
こうしていると、私達はどう見えるのだろうか。
歳が離れているのは一目瞭然だから、友人には見えないだろう。顔も似てないし、義理とはいえ姉弟には見えないはずだ。
よくて親戚、悪くてショタコン……か。
髪と瞳の色のために目立ちまくっている隣の冬獅郎くんを見下ろし、肩を落とした。
どっちにしろ、びっくりするほど美人の冬獅郎くんと私では、とても血縁関係にあるようには見えないだろう。
これだけ見事な美形だと今更敗北感も湧かないが、と一人悶々としていると、袖がくいくいっと引かれた。
トリップしてた頭を戻して振り返ると、冬獅郎くんが私の袖をつまんで、こちらを見上げていた。
「ん…?どした」
冬獅郎くんの視線が、電車の窓の外を向く。
それを追えば、止まった車窓から見える、柱に付いた駅名の細長い看板。
「うわぁっ、降りなきゃ!」
それが降りるべき駅の名前であることを視認すると、冬獅郎くんの手を掴み返して、慌てて電車を降りた。
「うわぁ………デカ」
水着に着替えて更衣室を出た私は、思わずそう口にした。
パンフレットやニュースなどで見た事はあったが、実際にこうして目にすると圧巻だ。
イメージよりも数段広いテーマパークのような内装に、感嘆とも嘆息とも言える息がもれる。
屋内、屋外と広がる敷地内に、水着のままで入れる飲食店やエステ、ゲーセンまで備えた施設は、プールを含む複合施設と言った方が正しい。
しばし別世界のようなそこに瞠目してから、冬獅郎くんの姿を捜す。
あの目立つ白髪、すぐに目に入った。
男性更衣室の出口に佇んでいたマイ弟の背後から歩み寄って、
「だーれだっ」
定番のそれをやってみたけれど。
しーん。
目隠しした手を振り払うこともなく、まして答えてくれることなどない冬獅郎くん。
自分でやっておいてなんだけど、結構むなしい。
おずおずと手を離すと、ゆっくりこちらを向いた弟。
真顔。
ちょっと、泣いていいですかね?
「さぁー、行こうか。まずはここの名物のウォータースライダー制覇するよー」
わざとらしくも冬獅郎くんを上の階のウォータースライダー降り口に連行。
瞳の色に合わせたのか、母が買った深緑の膝丈の水着姿の冬獅郎くん。
やっぱり細いなあーと思いつつ、自身を見下ろす。
ショートパンツにタンクトップの、俗に言う洋服水着は、一昨年の夏に買ったもの。
こういうのを選ぶから母に地味だと言われるも、ビキニなんて私には無理です。
いくつかあるウォータースライダーの内の一つの入り口にたどり着き、係の人から大きな浮輪のようなチューブを受け取った。
これに乗っかって滑り降りるらしい。
二人乗りOKということで、冬獅郎くんを前に乗せ、何気にビビりな自分は冬獅郎くんを抱き込むような形で真後ろに。
「では行きまーす、しっかりつかまって下さいね、3、2、1……」
係の人のそんな声が聞こえたかと思うと、
既にチューブは滑り出していた。
「いやぁぁあ〜っ、ちょっと待って〜っ!」
待つはずもないチューブはすぐに加速し、度重なる急カーブに振り落とされそうだ。
「長い長い長い!! どこまで続いてッ、って、うおぁっ!?」
ここ一番のきついカーブに、離れかけた冬獅郎くんの背中。
浮いた感覚から、落ちかけてるのは自分だと一瞬の間を置いて分かった。
悲鳴を上げる暇もない、そんなわずかな時間。
ぱっと振り返った、冬獅郎くんの翡翠の瞳が見えた。
ガシッ。
私が冬獅郎くんの瞳に吸い込まれている間に、私は彼に腕を掴まれ、チューブの上に引き戻されていた。
再び腕の中にある、冬獅郎くんの華奢な背中。
バランスを取り戻しても腕は冬獅郎くんに掴まれたままで、さっきより格段に振り落とされそうな感覚が無い。
間もなく見えてきた出口から、飛ばされるようにしてプールに投げ込まれ、しばらく沈んでいた冷たい水の中。
それでも離れなかった冬獅郎くんの掌が、ただただ熱かった。
。.。.。.。.。.。.。.
気付いたら日付越えてるΣ(´Д`;)
まさかの夜中うpになりました。ていうか、今日はもう書けないなと思ってたのに、いつの間にか寝ながらケータイぱこぱこしてました(ノ∀<*)
つか、プールネタどんだけ引っ張る管理人。
ホントは、このプール話のストーリーというか小ネタが色々浮かんでたハズなのに、現時点で全く思い出せません。
次回姫達が家に帰ってたら、管理人のショボイ脳細胞が死滅したと思って下さい。(笑)
07.12.29〜30
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