011



戸締まりを確認した後部屋に戻り、いつものようにエアコンを止め、扇風機を回して布団に横になる。



だが、目が冴えていて眠れない。
こういう時は、何時間経っても眠れないことは分かっていた。
理由も、分かっていた。



何度も寝返りをうち、強引に目を閉じるが眠気はこず、逆に意識が冴えざえとしているのを自覚する。



頭を巡るのは先程のニュース。

ロシアの国境の地域で揉め事、なんて別段珍しくもない話題だが、やはりああして身近な人が現地にいるのだと思うと、受け止め方が変わる。


両親の身の安全は昔から案じてきたが、漠然とした不安で眠れなかったのは子供の頃の話。


今、不安を感じないわけではないが、不眠の原因は延々と両親がいる場所の情勢や、そんなどうしようもないことをとりとめもなく考えるのをやめられないからだ。



「あぁダメだ、眠れない」



体を起こし、思わず口に出して言ってしまった。

そして、今ここにいるのは自分一人ではないことを思い出した。



「あ、ごめん。起こした…?」



薄く目を開けた隣の冬獅郎くんを見て、謝る。

ゆっくりこちらを見上げた目が不思議そうだったから、苦笑を返した。



「ごめんね、考え事してたら眠れなくなっちゃって」



寝てて、と続ける前に、冬獅郎くんが体を起こしたので、思わぬことに口をつぐんだ。

無反応のまま寝てしまうかと思ったのに。



体を起こした冬獅郎くんは、私の顔を見ていた。

いつもの儚いような表情がない。

同じように冬獅郎くんを見つめて思った私に、不意に腕がのびてきた。



白い冬獅郎くんの腕は私の顔の前まで伸び、頬の前で止まった。

しばらく空中で漂った、私なんかよりも繊細な指先は、ゆっくりと私の頬に触れた。


触るというより、指先で少し押すような感覚。

優しい温度が伝わってきた。



はじめて自ら行動を起こした冬獅郎くんに、ただただぼうっと見ていると、手はさほど長い時間そこにとどまることなく離れていった。



「………ねぇ冬獅郎くん」



少し意識を飛ばしたまま、私は言葉をつむいだ。



「今日だけ、抱き枕になってくれない?」



反応無し。

いやだって。
人肌がこんなに落ち着くだなんて思わなかった。


冬獅郎くん抱きしめたら絶対寝られる。


ぱん、と手を合わせて、



「明日アイス買いにパシられるから!」



そう言ってから、ぽんぽんと自分の布団を叩いて呼び寄せ、のらりくらりと寄ってきたマイ弟を抱え込んで、安らかな眠りを手に入れた。



予想以上に柔らかかった肌と、ゆるやかな温もりを抱きしめたら、驚くくらい眠気はすぐにやってきて、


こちらも柔らかい髪に頬を寄せて一発で眠りに落ちた。

















。.。.。.。.。.。


ハグなんてまだ先だと思ってたのに、意外に早かった…
ハグどころか一緒に寝てるしね!

いいのかシロちゃん…と問いながら書きつつ、まだまだ口は聞いてくれません本作のシロ坊です。


今日はシロの誕生日〜♪
てことで昨日から準備してたんですけど…
ここで終了…?

いゃ、ちょっと今からもうひとふんばりしてみます(ノ>ロ<)ノ


07.12.20


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